【記者解説】中谷元防衛相メガフロート案提示 辺野古ありきの「先祖返り」


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埋め立てや護岸工事が進むキャンプ・シュワブ沿岸部。右側の大浦湾には軟弱地盤が広がる=6月12日午前、名護市辺野古(小型無人機で撮影)

 米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古の新基地建設を巡り、中谷元・元防衛相が玉城デニー知事との会談で、辺野古の海上に巨大な浮体を設置するメガフロート案を提示したと山崎拓自民党元副総裁が明かした。埋め立て予定海域の軟弱地盤の問題を受け、山崎氏自身も「埋め立てを続けることは難しい」との認識を示すなど、現行計画の実現を困難視している。とはいえ、その代替案が県内移設、辺野古ありきの「先祖返り」の退行した案である印象は否めない。

 メガフロート案は1996年4月の日米による普天間飛行場の返還合意後に浮上。撤去可能な海上ヘリポートのメガフロート形式での設計が検討された。その後も移設を巡るさまざまな議論が続き、2006年に現行の埋め立て計画となった。日米両政府は「辺野古が唯一の解決策」と繰り返すが、完了までに少なくとも12年はかかる見通しだ。

 一方、中谷氏や石破茂元防衛相ら、自民党の国防族議員がここに来て現行計画の見直しを示唆するようになった。来年9月の自民党総裁任期を見据えた「ポスト安倍」の動きだ。沖縄との関わりが深い山崎氏もそのてこ入れをしているとみられるが、沖縄の基地問題を政争の具とするのは許されない。

 玉城知事は新基地建設の一刻も早い中止を求め、県が設置した有識者による「米軍基地問題に関する万国津梁会議」は、近年の安全保障環境を踏まえた在沖米軍基地の整理縮小を提案している。玉城知事はその実現に向けてぶれない姿勢を見せる必要がある。

(座波幸代)