【深掘り】なぜ今さら「辺野古メガフロート」? 山崎拓氏と金秀・呉屋氏の狙いは


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 米軍普天間飛行場移設に伴う名護市辺野古の新基地建設を巡り、玉城デニー知事は6日、中谷元・元防衛相との3日の会談で「メガフロートの話は出ていなかった」と述べ、中谷氏から埋め立て工事の代替案提示はないとの認識を示した。一方、中谷氏や山崎拓元自民党副総裁と4日に会食した知事の後援会長で金秀グループ会長の呉屋守将氏は、会食の席でメガフロート案の言及があったとし「埋め立てをしないなら一歩前進だ」と前向きな姿勢を見せた。中央政局をにらんだ中谷、山崎両氏の相次ぐ来県は、膠着(こうちゃく)状態の移設問題に揺さぶりを掛ける狙いが透け、さまざまな思惑が交錯する。

■既視感満載

 「メガフロートから始まってL字案、陸上案、今のV字案になっていると経緯を説明していたけど、メガフロートに戻す話はしていなかった」

 玉城知事は、中谷氏は会談の席で現行計画の推進と軍民共用案や自衛隊との共同使用を強調していたと説明した。これまで検討され、実現しなかった内容の提案に終始し「話が全部過去に戻っている感じがした」と語った。ツイッターでも「デジャビュ感満載だった」と会談の感想をつづった。

 一方、会談翌日の4日に来県した山崎氏は本紙などの取材に「中谷氏の真意は軟弱地盤の関係で埋め立て工事を続行することは無理でやめるべきであり、その代案としてメガフロートに戻ったらいいという考えだ」と、あくまで「中谷氏自身」が知事にメガフロート案を伝えたと強調。埋め立て再考の「既成事実」をつくろうとする意向が見え隠れした。

■真意どこに

 山崎氏と親交の深い呉屋氏は、現行計画を巡る県と国の法廷闘争について「今の裁判の在り方では最高裁までいっても負ける可能性がある。裁判の結果に従わない知事という大きなダメージを受けることになる」と先行きを懸念する。

 メガフロート案を「海にくいを打つ必要もないし、環境にも優しく埋め立てよりいい案だ」と代替案として肯定した。20年余り前に同案が取り沙汰された時は「工事で利益を受けるのは本土の大手鉄鋼会社で地元にメリットがないと撤回となった」と振り返った。

 一方で昨年2月の県民投票は「一義的には埋め立ての是非を問うた内容だ。埋め立てをやめてメガフロート案とすること自体は県民投票の趣旨に反しない」という認識を示した。

 与党議員の一人は呉屋氏の発言を「額面通りに見るとよくない」と真意を測りかねている。ただ、中谷、山崎両氏の動きは「総裁選に向けた思惑が見え隠れする。自分たちの存在感を発揮させたいだけで、沖縄側のことを考えていることは毛頭ないと思う」と指摘。軟弱地盤を念頭に「辺野古新基地は必ず暗礁に乗り上げる。それは日本政府も分かっており、今は振り上げた拳の下ろし方が分からないだけ。山崎氏が動くことで顔が立てられるようにしているのではないか」とけん制した。 (座波幸代、吉田健一)