参加企業の取り組み


この記事を書いた人 Avatar photo 田吹 遥子

KPG HOTEL&RESORT/同性婚の披露宴も

 ホテルでキャリアアップするウチナーンチュの少なさに社長が危機感を感じ、SDGsへの一歩として、沖縄で活躍できるホテルスタッフを育成するという社内の軸ができた。  若い社員に質の高い教育を、と社長を筆頭に管理職が専門的な知識を伝える研修を沖縄で始め、九州に広がった。社会貢献として、法人化したピンクドット沖縄の事務局を社員が兼務する。LGBTフレンドリーを社内外に宣言して同性婚の式や披露宴も開く。美さと児童園への支援事業も続けている。社内の風通しがよく社員が活発な会社だ。

KPG HOTEL&RESORTの比嘉利作さん

 

 

生活協同組合コープおきなわ/環境配慮の商品を

 コープおきなわは、おいしい牛乳を安心して飲めるようにと1976年にお母さんたちが作った生活協同組合。設立自体が暮らしや安全・安心と結び付いており、沖縄戦ガイドブック作成や食育などSDGsと合致する活動を続けてきた。

 今年はSDGs17目標から優先課題を三つ設定した。一つはエシカル消費で生産者を搾取せず、環境に配慮された商品を「消費者の1票」として選ぶことを広げる。また住み続けられる町づくりとして買い物支援、全ての基盤として平和活動の三つを、無理なく継続できるよう進めていく。

生活協同組合コープおきなわの與久田喜美子さん

 

 

沖縄県農業協同組合(JAおきなわ)/豊富な島野菜紹介

 SDGsに取り組み始めてまだ日が浅い。何ができるか勉強する中で、「地域の農業を振興し、食と緑を守る」という協同組合の組織自体がSDGsと深く関わっており、組合員や農家が普段からやっていることがSDGsだと気付いた。

 このことを伝えようと、毎月発行する広報誌でJAの取り組みをSDGsのゴールに当てはめて紹介している。今回は島野菜の認知度向上と消費拡大を目的に、市場には出ないが豊富にある島野菜を説明し、試食販売する取り組みを、イラストや写真を付けて分かりやすく伝えた。

JAおきなわの城間宏一さん

 

 

平和運動を中心に/沖縄創価学会

 仏法の精神を基調に平和・文化・教育の活動に世界中で取り組み、創立90年を迎える。「誰も置き去りにしない」というSDGsは仏法に通じ、その普及推進に取り組んでいる。

 SDGsに関連する写真や動画を世界地図上で共有できる参加型のスマホアプリを作った。「わたしと地球の環境展」では環境問題を解説し解決策を紹介する。今年は核軍縮や気候変動へ具体的な提案をする。

 沖縄では平和運動を中心に取り組み、体験者に描いてもらう「沖縄戦の絵」の巡回展をし、中高生が聞き取った証言集も発刊する。

沖縄創価学会の銘苅伸一さん(左)、山口敬祐さん

 

 

無洗米で汚濁削減/沖縄食糧

 主な仕事は玄米を精米して県内の量販店や飲食店に卸すこと。食品衛生管理の国際基準である精米HACPPを国内で初めて取得した。SDGsの具体的取り組みとして、BG製法の無洗米がある。普段の業務や工場内の取り組みがSDGsにどう当てはまるか考えた結果だ。無洗米はとぎ汁を出さないことで汚濁物質を削減できる。2011年からの累計でCO2排出量を4400トン、ヘドロをドラム缶3万5千本、油は960本分を削減した。 コロナ禍では子どもや留学生、医療従事者へ米やおにぎりを提供した。

沖縄食糧の與儀達真さん(左)、川満元暉さん

 

 

離島の生徒を応援/沖縄セルラー電話

 今年度、SDGs宣言をしようと準備中だ。自社の取り組みをSDGsの17目標に振り分けると、目標6「安全な水とトイレを世界中に」以外の全てに該当するものがあった。  「沖縄セルラー子ども基金」で継続的に子どもを支援する。健康経営では優良法人の認定を受けた。「離島ケータイ奨学金」は高校がない島を離れる生徒・学生に通信費を提供している。ジェンダー平等ではLGBTプライド指標を2回受賞した。

 首里城復興支援や世界自然遺産についての普及活動など県や各企業と協力して進めていきたい。

沖縄セルラー電話の伊藝一哉さん

 

 

妊活ローンを創設/沖縄県労働金庫

 ろうきんは、働く人が互いに助け合うための協同組織の福祉金融機関。沖縄では子どもの貧困問題に何かできないかと県労働者福祉基金協会を事務局に「ろうきん 全労済 働く仲間のゆめ・みらい基金」を設立して寄付し、最近ではコロナ禍で収入が減った世帯への食糧支援も行った。

 ろうきんらしい商品を作ろうと身体的・経済的に負担が大きい不妊治療をする人が安心して働けるよう妊活サポートローンも創設した。不妊治療への理解を広めるリーフレットを作るなど、社会全体で支え合うための啓発にも力を入れる。

県労働金庫の松村直紀さん

 

 

女性の視点 業界に/オー・イー・エス(沖縄受験ゼミナール)

 SDGsへの取り組みは始まったばかりだが、以前から県の委託を受けて経済的に厳しい高校生への進学支援をしている。条件はあるが授業料などを無料化しており、今後も継続する。

 社内では女性リーダー育成などを目標に女性活躍推進委員会を発足させた。女性の視点は教育業界でも重要だ。女性社員から意見をもらって就業状況を改善し、女性社員のキャリアアップにもつなげていく。

 沖縄から全国・世界へと活躍できる人材育成を目指すという経営理念に基づき、日常からSDGsにつながる活動を育てていく。

オー・イー・エスの小六通敬さん

 

 

子ども支援も継続/沖縄銀行

 昨年3月におきぎんグループSDGs宣言をした。経営理念に照らして、地域経済、地域社会、地域環境、ダイバーシティとの共創に重点的に取り組む。

 ことし30回目を迎えた「おきぎんふるさと振興基金」では2019年度時点で、沖縄の産業振興、伝統文化、学術研究に励む272の個人・団体に1億7千万円以上を助成した。また、19年度はグループ全体での海岸清掃、沖縄こどもの未来県民会議への寄付、子ども食堂への支援も行っており、今後も継続させたい。

沖縄銀行の石川尚三さん

 

 

環境教育の実施も/沖縄クリーン工業

 昨年11月にSDGsのキックオフを行い、今やっていることがSDGsとどうつながっているか、社員と考えることから始めた。

 社業では貯水タンクなど建物の衛生維持管理、厨房(ちゅうぼう)からの廃油回収・清掃と堆肥化、下水道の洗浄や管内の異常確認、廃棄物のリサイクルなど人々の生活を支える身近な業務を行う。環境に関わる内容が多くSDGsとも関連が深い。

 CSRとしてエコキャップの収集作業や、環境イベントで環境教育の手伝いもする。県のSDGsパートナー登録もした。他社と交流し深めたい。

沖縄クリーン工業の前田裕樹さん(右)、安里一寿さん

 

 

一言動画を作成中/日本青年会議所沖縄地区協議会

 日本青年会議所(JC)は20~40歳の会員が全国に3万3千人ほどいる。関東、九州、沖縄など10の地区協議会があり、全ての組織が全ての事業をSDGsの17項目に当てはめて活動している。

 沖縄地区協議会ではSDGs推進委員会を設けて全員で話し合って事業を作っている。SDGsを知ってもらうため各界の著名人から一言ずつもらってつなげる動画を作成中だ。コロナ禍では飲食店のデリバリーアプリも作った。日々できることを模索し、2030年の先を見据えて子どもたちへの活動も始めている。

日本青年会議所沖縄地区協議会の山内皓斗さん

 

 

部署設置して推進/日本たばこ産業 沖縄支店

 JTグループとしてたばこ、医薬、加工食品の3事業で継続的な発展に取り組んでいる。ボトムアップ型の組織で、全国47都道府県の各支店で運営方法は異なる。沖縄では3月、流通を主とする営業部隊の中に社会貢献・地域貢献を推進する部署を立ち上げた。

 このチームでは、たばこを吸わない人と吸う人が共存できる環境作りへ分煙コンサルティング、国際通り周辺での地域清掃、飲食業の組合や福祉団体への支援をしている。

 地域の課題は地域ごと。本社は東京だが、支社でこそできることをしたい。

日本たばこ産業沖縄支店の清水直人さん(右)、中川慎也さん

 

 

全員参加で進める/セブン―イレブン・沖縄

 セブン&アイグループとして環境宣言をし、2050年までにCO2排出量を80%削減するなどの目標を立てた。レジ袋やストローなどプラスチックの削減、フードロス削減は沖縄が先駆けて取り組んでいる。

 さらに資源循環の取り組みとして石灰石を原材料にした新素材ライメックスを催事商品の袋に使っている。回収して食器に再利用し県内の児童養護施設に配布した。今後、県内で製品化できれば雇用にもつながる。1人で海は守れない。全員参加でSDGsを進められる仕組みやきっかけを企業として作っていく。

セブン―イレブン・沖縄の久鍋研二さん