<識者談話>野添文彬沖国大准教授 米の中国資金報告 冷戦時代のレッテル貼りと同じ


社会
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 沖縄県内で根強い基地反対の声や、県と日本政府が対立する背景には、日本の沖縄政策の失敗や、沖縄の声に耳を傾けない政府の姿勢、基地の集中などがある。こういった独自の理由を考慮せず、沖縄の政治状況について全て中国の影響力で説明しようとするのは誤りだ。

 報告書は、リサーチの手法に問題がある。沖縄のメディアが中国の資金を受け取ったという明確な証拠はない。中国の工作は成功していないと結論付けているが、この報告書によって沖縄が中国の影響を受けているという間違った見方が広がらないか懸念している。

 この報告書から読み取れるのは、日米の政策決定者が「中国が沖縄を主要なターゲットにしている」と考えているということだ。一方で緊張を高めて現状を招いた日米両政府の責任には触れていない。「米中新冷戦」といわれる状態に陥り、非常に視野が狭くなっている恐れがある。冷戦時代、自分たちに反対する人たちに「共産主義者だ」とレッテルを貼ったのと同じだ。

 シンクタンクの報告書は、米国の政策決定者が読み政策の判断材料とする。沖縄の基地反対の声は中国の影響力だという誤った見方を強め、地元の声に真剣に耳を傾けず政策をつくってしまうことが懸念される。

(国際政治学)