やっぱりステーキ代表「ライバルはラーメン。需要はある」<コロナ禍の挑戦>


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 沖縄発ステーキチェーンとして、全国に52店舗を展開するやっぱりステーキ。新型コロナウイルス感染症の影響を受けた3~9月も、全ての路面店は営業を続け、初の東京進出となる吉祥寺店をはじめ6店舗が新たにオープンした。千円ステーキという、手の届く「プチぜいたく」の提供で躍進したやっぱりステーキは、地域の「食堂」を目指す戦略で各地に根強いファンを獲得している。感染症の影響や今後の展開などについて、運営するディーズプランニングの義元大蔵代表に聞いた。(聞き手・沖田有吾)

やっぱりステーキ東京初出店となる吉祥寺店で、メディア各社のインタビューに答えた義元大蔵代表=2020年6月17日、東京都武蔵野市

 Q:コロナ禍でも積極的な出店を続けている。
 A:3~6月で4店舗増えた。吉祥寺店も6月にオープンした。東京は6月19日に自粛解除したが、うちは17日にオープンした。店舗数を伸ばすというより、コロナコロナと言っていても仕方ない。外食産業は非常に厳しく、つぶれるところもかなり多い。飲食業は薄利なので持たない。うちもそうだが、みんな薄利の中でやっている。つぶれると雇用もなくなり、オーナーは借金抱えてしまう。飲食店は閉店したら倒産してしまう。

 じゃあなぜうちが伸ばしたのか。元気がないから。みんなコロナで自粛しようとした。自粛して死ぬのか自粛しないで死ぬのかの中で両方の良いところ取りをするために、正しく恐れることをしっかりやった結果だと思う。

 ■「国際通りで働いている人の食堂」

 Q:店舗は基本的に営業を続けた。

 A:商業施設に入っていて施設自体が休業する店舗は閉めたが、他の路面店は開けた。ただ時短営業をした。従業員のリスクもあるので。従業員のマスク着用を徹底し、消毒をお客さんにも促した。お客さんは店内に入る前に手を洗ってから入ってもらっている。サラダバーも手袋つけて、従業員はマスクもつけてフェースガードもつけた。こちらから拡散しないように徹底している。

 Q:営業継続をした理由は。

 A:安心感が大きい。給付金もあったので、店を閉めるのは簡単だった。ただ、開いているという安心感が必要だった。全ての店が閉めてしまうと、働いている人はいるので食べるところがない。国際通りの店は売り上げが9割減になった。でもうちの強さは、千円というみんなが食べられる裾野で勝負している。

 今回のコロナで一番打撃を受けたのは中間層。上のアッパー層、お金持ちは個室など高級な店で密にならない。でもその下の中間層は恐ろしいほどに被害を受けた。だいたい客単価が3千円~5千円、まさに居酒屋などは大打撃を受けたが、それでも人間だからご飯は食べる。うちが小倉にオープンした時に、テークアウトだけで一日に170人来た。三重県の鈴鹿は店が大きく密にならないので店内飲食もした。やり方がある。密になるところはテークアウトで押していくし、大きいところは密にならないので中に入れる。

 Q:食べる需要はあった。

 A:そう。食べ方が変わっただけだ。それまでは来店していたのが変化した。飲食店も変わらないといけない。テークアウトできない業界がどかんと落ちた。うちは元々テークアウトやっていた。温かいうちに食べてほしいからクローズアップしていなかったが、オープン当時からやっていてノウハウは持っていた。

 

コロナ禍で観光客が激減した国際通り。まだ本格回復に至っていない=2020年8月

 Q:売り上げは回復しているのか。

 A:国際通りの店舗も戻ってきている。要因は、周辺のお店が開き始めたから。うちは基本的に、周辺で働いている人の食堂になろうと思っている。観光客はターゲットじゃない。コロナで国際通りがシャッター街になった時には、土産店などが休業したのでうちも大きなダメージを受けた。でも開け続けた。全部の店が閉まっているわけではないから、他の飲食店が開いていないのでうちに来てくれた。

 ローカルの客が多い店は、コロナで落ちたけれど戻りは早かった。テークアウトの分、少し売り上げ伸びている店もある。お客さんは少なくなっているかもしれないけれど、テークアウト部門は以前よりすごく伸びて店の売り上げの一角を担うくらいになっている。会合などが特にそう。PTAの集まりとか。バーベキューしたいけれどコロナで感染が怖いから弁当にする。うちに50個とか弁当の注文をする。普通の弁当は素っ気ないので、ステーキ弁当なら豪華なこともあり、そういう需要を取っている。

 うちは大企業ではないので必死でもがかないといけない。後は見る角度が少し違う。ただ待っているという営業はしない。やせている女性に300グラム1000円のステーキありますよと言っても売れない。肉食べて元気出しましょう、ぱっと食べて帰りましょうと言った方がいい。男性なら逆にするとか、アプローチの仕方で店としてはやれることいろいろある。

ステーキを楽しむ客ら=2020年6月、東京都武蔵野市の吉祥寺店

 ■「その人のおいしい」を狙う

 A:今回は店舗数が増えたので(売り上げは)前年をぎりぎり超えてはいるが、一店舗当たりの売り上げは落ちている。それをテイクアウトや通販事業でカバーしている。FCからの売り上げ全部取らなかった。コロナになったので、みんな頑張れという意味で。ロイヤリティーも大幅に免除して頑張ってもらった。こんなに下げなくていいよというオーナーもいた。FCに対しては休むなら休んでねと言ったけれど、結果的には開けたところが多かった。開け方は各エリアで工夫していた。入り口にインターフォンつけて外から注文する形とか。

 Q:フランチャイズ(FC)はどうか。

 A:FCの希望者は相当多い。コロナ後に新たにFCやりたいという人もいっぱいいる。やっぱりステーキが大好きで、地元の人に肉食べてもらって元気出してもらう、地場に根差した食堂のような形を目指してもらう。

 Q:出店する際には社長自ら物件を見る。

 A:今でも行っている。フィーリング的な部分もあるが、人の通りや車の通り、看板の付け方、人口や駅の乗降客数、車社会か電車社会か、商店街なのか住宅街なのか、どこに看板付けられるのかなど見るべきところはたくさんある。

 Q:店それぞれに個性がある。

 A:うちは居抜きなので、同じようには作れない。設備も前の店が置いていったものを使えれば使う。その分出店費用が抑えられる。ある意味で再生屋のようなもの。あるものをまずは選別して、動線も店ごとに違う。4店舗くらい同時にやっていると頭の中がこんがらがってくるけれど。

ミスジ肉を使った看板メニューの「やっぱりステーキ」。千円という価格ながら「誰でも食べられるからこそ一番おいしいものを」(義元代表)というこだわりから、肉の味が濃い米国産を使って いる。(ディーズプランニング提供)

 Q:千円ステーキの価格を保つためにしていることは

 A:コスト管理は重視している。やっぱりステーキを始めた時には、自分は料理人ではないし、誰でもできる仕組みを作ろうと思った。基本的に券売機でやっているステーキ屋はほぼなかった。スープ、サラダ、ご飯はセルフにしたから従業員が持っていかない。ソースもたくさん出している。沖縄はA1ソースとかしかない。これが苦手な人もいっぱいいた。自分のおいしいは人のおいしいではない。その人のおいしいを作るためにソース増やした。

 お替わりもセルフにしたので、顧客満足度が高まった。自分の少しと相手の少しも違う。少しとお願いしたのに多いということは良くある。でもセルフでやれば自分の適量食べられる。だから顧客満足度につながる。うちは食べ物を残す人が少ない。ご飯食べない人は取らないから。フードロスが少ない。

<後編につづく>ミスジ肉を選んだ理由、ライバルは…(残り4214文字/全文7143文字)