逆境を克服する人材活用術とは? 求人情報を無料化したプロアライアンス<コロナ禍の挑戦>


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8月末までリモートワークを実施し、出勤人数を制限したオフィスで働く大城佑斗社長

 新型コロナウイルス感染症の影響で、2019年まで人手不足が続いていた県内の求人状況は激変している。動画求人サイト「オキナビ」を運営するプロアライアンス(那覇市)は、新たに基本的なサービスを無料で利用できる「ウェブdeつながる-okinawa」を開始した。大城佑斗社長にサービス開始の狙いやコロナ禍での働き方の未来について聞いた。
(聞き手・沖田有吾)

■全ての人がつながれるように

 Q:基本料金が無料の「ウェブdeつながる-okinawa」を開始した。

 A:元々温めていたアイデアだが、コロナ禍で県内の大学生から、求人情報がどこにあるのか分からないという相談を電話で受けたことが直接のきっかけとなった。自分たちに何かできることはないかを考えた時に、企業と求職者の接点が減っているので接点を創出したいと思った。それまで持っていた構想を落とし込んで、やりたいことをこのタイミングでやったら企業にも求職者にも助けになるかもと考えた。県内事業者の早期回復ができれば求人会社は必ず復活できる。求人会社としてできる手助けをしようと思った。

 コロナ禍では中小企業の求人に掛けられるコストは限られている。しかし一方で、逆境を克服するためにも人材は必要だ。求人情報の集まるプラットフォームになれば、企業にも求職者にもより使いやすくなり、マッチングの可能性が高まる。

 Q:コロナの中で、収益モデル変更にためらいは。
 

 A:全くない。求職者側の困っている声を聞いて、かつ企業は人を取りたいけれどどこに求人を出していいか分からないし、採用コストにも困っている企業が多い。経済が立ち直らないと求人業界は死んでしまう。あそこに求人を出せば安泰だよね、というところがない。全ての人がつながれるようにしたいと、急ピッチで構築した。1カ月で構築した。これからの時代は動画求人とデジタル求人の時代になる。

 

ウェブdeつながる-okinawaのホームページサイト

 Q:なぜ基本料金を無料にしたのか

 A:全国的には人口が減少し、県内の労働人口もいつか減少局面に入る。一方でデジタル技術の発達で求人サイト、求人媒体は増えている。アイデアも出てきて、求人の接点は多様化している。そもそも人口が減少する中で多様化するので、分散する。分散すると、あちらもこちらも使ってとなって、企業側の採用コストは高くなっていく。接点が複雑化してしまう。

 Indeedが急成長した背景には、求人に特化した検索エンジンのため、条件に合致した求人が掲載され、求人情報が集約されている点がある。沖縄はアカウント登録や掲載の時点で料金を取るフロント型の収益モデルがメインだった。でも、接点が多様化してしまっている局面では、1つのサイトに全ての求人がまとまっているサイトが求められる。時代の流れとして、フロント型の収益モデルから下がっていくのは必然だと思う。

 

 ■SNS感覚で気軽に利用

 Q:反応はどうか。

 A:どんどん増えてきている。105社150求人、求職者は約500人。予想よりも早いペースで増えている。求職者は特にどんどん増えている。企業側、求職者も気軽にメッセージを送り合うことができるのが特徴だ。さらにメッセージを送り合って、企業と求職者の間でコミュニケーションをとってほしい。求人サイトではなく、求人コミュニケーションサイトなので。企業側からもメッセージを送れる。

 登録している求職者の個人情報は、年齢と在住市町村くらいしか分からないようになっているが、例えば自分の会社に近いところに住んでいる人がもしかしたら興味を持つかもしれないので、そこにメッセージを送る。こういうコミュニケーションを取れるのは沖縄では初めてだと思う。SNSに近い感覚で気軽にメッセージを送り合ってほしい。

ウェブdeつながる-okinawaのメッセージ機能のイメージ。企業と求職者間でSNS感覚でメッセージをやり取りすることができる

 Q:ニーズがあったということか。

 A:他の求人情報でも見たことのないような企業からも求人が出ている。間違いなくニーズがある。今後は、アプリを開発してより使いやすくしていく。

 Q:「ウェブでつながる」のマネタイズは。
 

 A:求人情報が多くなると、どうしても埋もれてしまう。そこで上位表示や特別表示する際のオプション料金などで収益を上げることを想定している。また、オプションとして説明会のライブ配信や動画面接などの機能を順次追加していきたい。
 

激動する時に、苦境を乗り越えるために必要なのもまた人材だ。求人事業者にとっては、事業者の業績回復は生命線に等しい。低コストで効率の良い求人サービスの提供で少しでも貢献したい。

 

 ■「非接触」「分単位」の働き方へ
 Q:大手人材紹介会社で採用コンサルティングを担当していた。今後、ウィズコロナ時代の働き方はどう変化すると見通すか。
 

 A:キーワードは『非接触』に尽きると思う。大きく4つほど変化がある。まず働き方。リモートワークやビデオ会議が当たり前となる。当然ながら不要不急の打ち合わせはなくなっていく。しばらくはもやもやというか不慣れもあるが、時間経過によって当然のものになっていく。一昔前はみんなガラケーを使ってメールを自分でアドレスを決めていたが、今ではLINEがツールとして当然になっている。半年もすれば不慣れも習慣化されていく。
 

 次に点から円へ、という変化が現れる。沖縄の場合、東京に行って打ち合わせがしたいとなれば自ら行く。東京に行くということが一つの目的となっていた。しかしリモートなら東京でも北海道でもすぐに打ち合わせができる。従来は対面を重視していた以上、自分という点を動かしていく作業だったが、これからは円という見方になる。自分がどこにいようとネットがあればどこでもつながる。

 重要な点として、対面でないと意思決定できない人は競争社会の中で出遅れていくことが十分に考えられる。スピード感が圧倒的に違ってくる。間違いなく二極化する。対面による意思決定を求める人も一定数いるのでなくなることはない。公衆電話がなくならないのと同じで、少なくなってもゼロにはならない。でも、成果を上げていく人はリモート、オンラインに適応できる人。5GやIOTの社会で、オンラインに当たり前に対応できないと取り残されていくことは十分考えられる。
 

 一番大きな変化は時間の考え方。これまでの1時間単位の考え方が、分単位に変わっていく。沖縄なら、那覇から今帰仁の客に会いに行くには1時間以上かかる。実際に会って、また1時間話す。長い時間を掛けて行くのでしっかりと下準備をして有意義な1時間をすごそうとする。また1時間以上かけて戻る。東京では電車の移動時間を有益な時間にしようといろいろ工夫してきたが、それがなくなる。リモートワークならば移動時間はゼロにできる。そうなると、日常の電話に近い内容になる。15分だけとか30分だけとかで終わって、またやり直しも気軽にできる。1時間という単位で仕事していたが、刻むことでより時間の価値が上がる。

 A:暮らしも変化するだろう。住まいなど日常生活に関わる分野で、非接触を支えるための技術が立ち上がってくることは十分予想される。

 

<後編につづく>変化に挑戦、適応力求められる時代に(残り3248文字/全文6128文字)

 

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