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「リピート率9割」の移動豆腐店 元美容師・3代目の再生術とは<コロナ禍の挑戦・インタビュー>

 新型コロナウイルスの影響で飲食店やホテルが休業や時短営業となり、食品製造メーカーの売り上げも落ち込んでいる。そんな中、売り上げを伸ばしている豆腐製造メーカーがある。住宅街を走るカラフルな移動販売車が目印の池田食品(西原町、瑞慶覧宏至社長)だ。8台の移動販売車が島豆腐やゆし豆腐から総菜、スイーツまで種類以上の大豆関連商品を載せて県内各地の客の元に売りに行く。元美容師から家業を継いだ37歳の3代目社長に聞いた。(聞き手・玉城江梨子)


豆腐などの移動販売を手がける池田食品の瑞慶覧宏至社長。後はカラフルな移動販売車=西原町池田

 Q:新型コロナウイルスの社業に与えた影響は。

 A:うちは売り上げの8割が移動販売で2割が飲食店などへの卸。今年4~7月の売り上げは卸は前年比6割減だったが、移動販売は2割増えた。全体では15%増だ。コロナが追い風になっている。

 2016年から始めた移動販売が軌道に乗り始めたのは18年。今はリピート率9割だ。ドライバーはどこの家の誰が買うか把握しているので、その人の家の前に止まって販売する。お客さんもこの曜日のこの時間は豆腐の日と認知している。

 一方、日中仕事をしていて家にいないけど、池田の豆腐を買いたいという人にどう届けるのかが課題で、以前から宅配サービスを検討していた。新型コロナの感染拡大で、これまで移動販売車で購入していた常連さんの中にも「できるだけ対面は避けたい」という人が出てきた。
 
 これらを踏まえ、5月中旬に「毎日SOYまーる」という宅配サービスをスタートした。玄関などに鍵付きの専用ボックスを設置して、注文された商品を毎週決まった曜日に届けるサービスだ。お客さんは、家にいなくても商品を購入でき、買い物にいくという時間も節約できる。事前予約なので、こちらは製造数が把握できるというメリットがある。契約件数の目標は1年で200件だが、すでに50件ほど契約いただいている。

 ■劣悪では文句ばかり…量販店から撤退

 Q:そもそもなぜ移動販売を始めたのか。

 A:きっかけはリブランディング(ブランド価値の再構築)。量販店で隣に並ぶ豆腐と自分たちの豆腐の違いを答えられないことに気づいた。量販店に大量に卸すことはできないが、素材や生産者にこだわった商品を作って差別化したいと思っても、量販店はどうしてもバイヤー主導。必ずしもメーカーが作りたい物を作れるわけではない。手間がかかっても良質なものづくりをしたい、それに見合う対価がほしいと思った。でもブランディングができていないと、値段を買いたたかれる。そこでいったん量販店から撤退しようと考えた。

 労働環境を改善したいという狙いもあった。劣悪な環境で働くと会社の文句しか言わなくなるんです。入社した人がすぐに辞める。求人を出しても人が来ない。量販店に卸すには、店が開店する午前9時までに商品を届けないといけない。台風の日も正月も休みなしだ。当時は50店ほどの量販店に卸していたが、毎日、朝、昼、夕方できたての豆腐を届けていた。あちこーこー豆腐は日持ちしないため、売れ残った物は廃棄となる。返品率が50%のところもあった。朝早く起きて豆腐作っているのに、返品率が50%。何のために働いているのか、と社員は疲弊していくばかりだった。負のスパイラルだった。

 2015年12月31日をもって全店舗から撤退し、移動販売に変えた。県外で移動販売をしている例を知っていたので、そこから話も聞いていた。やると決めたらスピード感をもって進めた。離職者も大量に出た。当時の社員で今も残っているのは2、3人。

 Q:離職者が大量に出て困ったのでは。

 A:あえてそうしたところもある。自分たちの抱えている問題を外的要因のせいにしたくなかった。同じ方向を向いてできる人たちが今はそろっている。

 

<後編につづく>美容師から転身「かっこいい」目指す(残り1581文字/全文3110文字)

 

 

<コロナ禍の挑戦・インタビュー>

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