(後編)逆境を克服する人材活用術とは? 求人情報を無料化したプロアライアンス<コロナ禍の挑戦・インタビュー>


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「採用コストを減らすことで県経済の回復に貢献できればいい」と話す大城佑斗社長=19日、那覇市銘苅

 ■変化に挑戦、適応力求められる時代に

 Q:日本企業の文化だと、定時があって残業代がついて、というのが一般的だった。本当に変わるのか
 

 A:企業の考え方による。企業がオンライン化をどこまで進められるのか。企業自体が取り組みを進めないと、ただ言っているだけに過ぎない。県内はPCの普及率もそれほど高くなく、今すぐに実行しようとすると飛び級になってしまう。初心者からスタートする人は、オンラインに慣れ親しむ、習慣化することが必要になる。明日からすぐに転用することはできない。

 今まで、いろいろなことを対面の前提で積み重ねてきた。オンラインでは相手の温度感や熱量が伝わりづらい部分がある。例えば営業マンでは、キャラクター営業が不要になる。アイスブレイクというか、世間話をして面白い人ですねという感覚を与えることが不要になる。いかに端的にまとめて結論から伝えるか。端的に結論から簡潔に伝えることが求められる。意思決定が早い人が有利になる。戦略の変更を迫られる人も多いと思う。

 A:コロナが落ち着いてきたから今まで通りに戻そうという人と、これをチャンスととらえてオンライン化を進める人と二極化していく。しかし時代的にIOT化していく以上、トライする人の方が将来的には適応力なども上昇して、トライしない人との間に差がついていく。

 Q:在宅勤務などを多くの企業が体験して、通勤時間分を短縮できるなどのメリットが明らかになった。オフィスの必要性も変化するなど会社の形自体が変わりかねないのでは。
 

 A:事務所を撤退するという企業も多い。うちの会社も8月末までリモート化した。ただ、問題が出てくるのは、従業員とのコミュニケーション。日々同じ場所でコミュニケーションを交わしていたが、急に在宅になったために意思疎通の密度はやはり減ったと感じている。どうやってコミュニケーションを取る仕組みを構築するかは重要な課題だ。会社というよりも上司やマネージャー、代表者などが、会社全体としての取り決めとしてしっかり決めないといけない。勢いよく在宅に切り替えて決めごとがないと、退職を誘発しかねない。オンラインをうまく使いながらコミュニケーションをどう取るかを会社として考えないといけない。

オンラインで仕事ができるようになると通勤時間がなくなる(イメージ写真)

■「ジョブ型」企業になる前に

 Q:リモートワークは働いている実感がわきづらいという面がある。

 A:働き方として、日本で主流だった、人に仕事を割り当てるメンバーシップ型と、仕事に人を割り当てるジョブ型という考え方がある。県外ではジョブ型に変化しようとしている。ただ沖縄は、統計データがあるわけではないが、中小企業が多く人事を専門的に担う部署のない企業が多い。体感的には7割くらいになるように思う。その状況では、人事の判断基準などをしっかり定めることを優先するべきで、判断基準をしっかりと定めないままでジョブ型になってはいけない。
 

 メンバーシップ型は古き日本の形で、人に対して仕事を付けるという考え方。終身雇用の発想で、キャリアチェンジやジョブチェンジという、例えば営業の人が経理に進む、次は企画に異動、というような働き方。ジェネラリストを育てる仕組み。しかしオンライン化が進めば、明確な成果物で評価せざるを得ない。基礎考課、礼儀や礼節、品格がどうかなどの領域の評価はオンラインでは難しい。成果物によって評価される。数や充実度などの評価基準を会社内でしっかり定めないと難しい。

 一方、ジョブ型はスペシャリストの領域。この仕事をやるために人をつける。例えばアプリを作るために人を集めるなど、この仕事をやってくれという前提で募集がかかり、やったことで評価される。外資系企業はドライと良く聞くが、ジョブ型だからそういうことになる。やれると言ったのにやっていないのなら辞めて、というようになる。オンラインになると、少なくともその領域は判断基準として必要になる。沖縄でなぜやらない方が良いかというと、ベースになる判断基準などがない企業が多いから。評価制度やリモートで働いている時の従業員とのコミュニケーションなども含まれるが、社内のソフト面をしっかり整っていないまま、いきなりかっこうよくジョブ型を取り入れるなどの飛び級をしてしまうと取り返しがつかないことになる。

 Q:社内のソフト面は、社内文化が邪魔をしたり明確な指標がなかったりで変化が難しい部分。どうやって変えていくか。
 

 A:会社を経営する人には、自社の足りない部分や課題が何かを理解していることが大事。分かったつもりになっている人も多い。具体的に課題をいくつ挙げられるか。そこのベースがないと、対外的にあれをやりますこれをやりますと発信しても意味がない。ソフト面に目を向けて社員、会社と向き合っていく。その上でうちの社員ならこういう風に動ける、というのを考える。在宅ならサボれるかもしれない。そこを鼓舞できるかは信頼関係やコミュニケーションがないとできない。とりあえず何人か在宅勤務させなくてはならないからこの部署のあの2人は在宅ね、というようなやり方では、腐敗していってしまう。向き不向きは絶対に出る。おそらく、今は目標がなくコロナだから在宅に切り替えている会社は多い。そこを上司が、定量的な指標を設けていかないと、経営者側からするとやっているかどうか分からないのに毎月金を払うことになってしまう。明確に決めなければいけない。

企業のオンライン化はどこまで進められるか。挑戦するかしないかで二極化が進んでいくとの見方も

 ■オンライン化で見えてくるもの

 Q:時間の価値が変わったことをどう再認識していくべきか。
 

 A:オンラインをひたすらやり続けてみるといい。何日も外に出ず、商談は全てウェブというのを一週間でも続けると、移動時間がなくなる。その場にいる時間が圧倒的に長くなり、時間が余っているという感覚が出る。思ったよりも早く、まだこの時間かという感覚が出てくる。この時間なら打ち合わせをあと3件入れられるぞとか。一日のMAXは3~4件の訪問だと思っていたが、でもオンラインなら時間圧縮されて残った時間にいくつも入れられる。

 最近15分ミーティングというのをやっている。長くても30分。1時間は必要ない。対面だからこそ伝えなきゃ、聞かなきゃという思いが出るが、ウェブなら聞く用事が終わればスッとお互いが終わりにする。対面だと時間を無駄にしたくないという思いからできるだけ情報交換しようとするが、ウェブなら自分の伝えたいこと、聞きたいことを伝える。再度伝達したいことが出てきたらまたかければいい。

 

 Q:日本の企業の働き方は、いずれジョブ型に変わるのか。
 

 A:いずれはシフトしていくだろう。しかし、繰り返すが飛び級はまずい。ソフトはしっかり整備しないといけない。とても良いことを言っていても、実態が伴っていない会社は多い。乖離が生まれている。意識も急にやれば違和感でそれこそハレーションが生じる。いつからやるか設定してゆっくりと準備していく。これから1年間はとても大事な時期。今はある意味でとても大事な準備期間だ。

 Q:働く側にとっての変化は。
 

 A:副業解禁などの動きが出ているが、ジョブ型の副業も多い。案件が出あって、自分がそれをできるスキルがあればやる。まさにジョブ型。仕事に対して人が来る。副業を認めている企業と認めていない企業があるが、多くの企業は認めたくない。認めるだけの基準を設けられていないから。副業することで会社に対する損害がどれくらい出るか分からない。生産性が落ちるかもしれないので。でも落とさず、むしろ上げる方向になるならば認めたいというのが多くの企業の本音だと思う。

 副業は増える。ワークシェアという領域も含めて増えるだろう。1人の人間の能力をシェアして、給料を出し合うような働き方が増えてくる。非対面になってくる以上、個人の価値が高まっていく。自分はこんなことができるという能力があればいろいろなところで生きていける。個人の能力に負うところが大きくなる。

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