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平和つなぐ歌声 留学生36人のホストマザー経験、「共生」考えるきっかけに 玉城ちはるさん


この記事を書いた人 アバター画像 琉球新報社

 「沖縄の血と広島育ちが自分のルーツ」。父誠司さんの古里・沖縄と、自身が育った広島、さらに同じ原爆被害のあった長崎とを歌声で平和の思いをつなぐ活動を続けている。さらには日常を平穏に暮らす「生きやすさ」を追求しながら、生きることに悩む人たちに寄り添う伴走型支援にも携わる。

 広島で大学に進学直後、父が自死し進学を断念、19歳で上京し歌手活動を始める。「なぜ自分は進学できないの? 誰も助けてくれないの?」。ネガティブに捉える時期もあった。そんな時、偶然出会った中国人留学生と一緒に暮らすことに。「人を助ける」側に初めて立った。

 それから中国、台湾、韓国の留学生らと共に暮らすホストマザーを10年間続けた。歌で全国を巡業したり映画音楽や講演活動をしたりして留学生らを支えた。日中韓が同じ屋根の下、領土問題で意見がぶつかることもしばしば。台湾の学生から、沖縄の基地が中国の脅威の防波堤になっていると感謝されることもあった。だが個人通帳の残高が7万円になって「解散」。振り返れば36人の面倒を見ていた。

 「自分にとっての正義が相手には必ずしもそうではない」。留学生との暮らしで意見の対立もありながら、相手の立場を理解し互いを尊重して共に仲良く暮らす「共生」の意義を実感した。ホストマザーの経験を生かして小中高校や大学で「命の参観日」と題した講演も続けている。

 3年前に沖縄で初めて歌った。その際、父と祖父平一さんの古里今帰仁村を訪れた。親戚がいるなら会いたいとラジオなどで情報を呼び掛けたが、見つからなかった。「沖縄は日本で一番多様性がある県だと思う。悲しい歴史がありながら、いろいろなものを受け入れさせられてきた。攻め合ったり、取り合ったりではない共生を考えたい」

 


 たまき・ちはる 1980年4月生まれ、広島県出身。群馬県在住。広島の安古市高卒後、安田女子大に進学するも父の自死で中退し上京。2014年に初のフルアルバム「私は生きている」でメジャーデビュー。10年間のホストマザー活動が認められ「若者力大賞・ユースリーダー賞」を受賞。平和活動団体「EACH」を設立。自ら全国を巡って出版した「餃子女子」はベストセラーに。沖縄では「いしぐふー」のギョーザがお気に入り。現在、安田女子大で非常勤講師(人間論)も勤める。