ORANGE RANGE、新曲に込めた東北被災地への思いとは 自転車イベントのテーマソング


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新曲「Imagine」をリリースし「東北で出会った人や風景を曲に落とし込んで制作した」と語るORANGE RANGEのYOH(ベース)

 沖縄市出身のバンド「ORANGE RANGE(オレンジレンジ)」が、東日本大震災の被災地復興を支援する自転車イベント「ツール・ド・東北2020」(ヤフー、河北新報社主催)の大会公式テーマソングである新曲「Imagine」をこのほどリリースした。新型コロナウイルス感染拡大の影響で今回の自転車イベントは中止になった。震災後、メンバーで毎年被災地を訪れ、ライブや復興支援の活動をしている。YOH(ベース)に東北への思いや新曲制作についてオンラインで聞いた。 (聞き手・田中芳)

ORANGE RANGEの新曲「Imagine」のジャケット

 ―2011年3月の東日本大震災後、被災地を継続的に訪れ、アコースティックでの復興支援ライブやYOH個人でも活動を続けている。

 「震災が起きる2週間前まで、全国ツアーで岩手、宮城、福島の3県を回っていた。直後に震災が起きて、ひとごとに思えなかった。何も動けない、できない空気感というのも抱えながら、2011年9月にバンドで岩手県大船渡市の保育園と宮城県女川町の体育館で、炊き出しとアコースティックライブを、福島県いわき市のライブハウスでライブをさせてもらった。そこでようやく音を届けることと、自分たちでしっかり震災というものに触れる機会を作ることができた。バンドとしては音を届ける機会も作りながら、個人としてもなるべく現地に行き、何か手伝えることがあれば、自分なりに続けたいという気持ちに変わっていった。東北でつながった人たちとの出会いも含め、テレビや新聞、ラジオ、スマホで触れる情報の角度とは違う形で震災に触れさせてもらった経験は今振り返っても大きかったと思う」

 ―新曲のコンセプトは何か。冒頭の歌詞にある「本当の優しさを手のひらに」などに込めた思いとは。

 「距離感でいうと『お悔やみ申し上げます』とかそんな感じではなくて、実際に足を運んで目を見て話して、寄り添えたらいいよねという、そう考えられるようになって、自分の中でもピントが合っていった経緯がある。いつまでも(東北を)外から見るだけでなくて、内側に抱えている気持ちに少しでも触れていけるような感覚をこれからも大切にもっていたい」

ORANGE RANGE(長野竜成撮影・スーパーエコーレーベル提供)

 ―約5カ月後に東日本大震災から10年が経過する。歌詞の最後には「二度と忘れないように」と、決意のようなものも感じた。

 「例えば5年経過したときに『節目』という表現を前にして、過去のものになっていくというような感じがして、それを受け止めるのにもちょっと時間がかかる部分もあった。でも、東日本大震災が起きる2週間前までいたという事実がなかったら、自分の体内時計のスピードは今と違っていただろうという自覚もある。来年3月に『10年』というワードが溢れる日、どういう気持ちになるのか自分でも分からないが、紙一重の部分も含めて、引き続き向かい合っていきたいなと思っている」