10万尾のうち残ったのは2000尾…エビ伝染病初確認 拡大リスク低いが「防疫に万全期す」


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急性肝膵臓壊死症にかかり、内臓が白色化して壊死したエビ(左)(東京海洋大の廣野育生教授提供)

 県は19日、大宜味村のバナメイエビ養殖場で、甲殻類の伝染性疾病「急性肝膵臓(すいぞう)壊死(えし)症(AHPND)」によるエビの大量死が確認されたと発表した。AHPNDは持続的養殖生産確保法に基づき、まん延した場合に重大な損害を与える恐れのある特定疾病に指定されている。国内で発生が確認されたのは初めて。 

 県は養殖業者に対し、まん延防止措置を実施するよう命令を発出した。養殖業者は19日、施設内に残るエビの処分、養殖水槽の消毒を実施した。養殖は8月に開始したばかりで、これまでに市場への出荷実績はないという。

 同養殖場は8月9日にタイから養殖種苗(稚エビ)10万尾を輸入したが大半が死に、県が立ち入り検査を実施した10月8日時点で残っていたのはわずか約2千尾だった。

 養殖場は陸地にあって海面に接していないほか、村内に他にエビ養殖場がないことなどから、「感染拡大のリスクは低い」(農林水産省水産安全室)とみられている。ただ、AHPNDはバナメイエビと近縁種で、県内で養殖が盛んなクルマエビにも伝染する。感染や風評が広がるとクルマエビ養殖に大きな被害が及ぶことから、玉城デニー知事は「大宜味村と協力しながら迅速、的確な防疫措置に万全を期す」とコメントした。

 県によると、輸入した養殖種苗は、輸入検疫後に「着地検査」の実施が求められている。県は養殖業者に対して、毎月の「飼育状況報告書」の提出を求め、大量死があれば直ちに報告するよう求めていた。

 県の催促にもかかわらず養殖業者から報告書の提出がなかったため、県は立ち入り検査を実施。死んだ種苗のサンプルを検査したところ、水産技術研究所の検査と配列解析でAHPNDの陽性が確認された。

 バナメイエビの養殖業者は県内で同所の1カ所のみ。AHPNDは人間への感染事例は報告されておらず、発病したエビを食べても健康への影響はない。