原因は不明のまま 首里城焼失 長時間燃えた火元…解明につながらず


この記事を書いた人 Avatar photo 田吹 遥子
必死の消火活動を行う消防隊員

 鮮やかな朱色が沖縄の真っ青な空に映え、あでやかな装飾を誇った首里城。2019年10月31日午前2時35分ごろ、那覇市首里当蔵町の首里城正殿から出火し、隣接する北殿と南殿、書院・鎖之間、黄金御殿、二階御殿、奉神門の7棟にも延焼した。正殿は全焼した。沖縄戦で破壊され、戦後復興とともにウチナーンチュの英知を結集し、この年にようやく全体の復元が完了したばかりだった。沖縄の心、アイデンティティーの象徴、誇りなどとして人々に親しまれ、心のよりどころであり続けた首里城の焼失に県内外に衝撃が広がった。

 首里城火災の出火元は電気系統設備が集中していた正殿北東側とみられているが、原因は不明のまま、県警も那覇市消防局も捜査・調査を終えた。原因を解明できなかった理由として、火災が長時間続き、火元とみられる正殿北東が焼き尽くされたからだとされる。

激しい炎で崩れ落ちる龍頭を載せた正殿の大棟=2019年10月31日
目の前で激しく燃える首里城を見つめる住民ら

 県警と市消防は現場で採取した銅線などを検査機関で鑑定したが、有力な物証を得られなかった。県警は正殿周辺の監視カメラ画像を確認したが、放火など人為的な要因は見つけられなかった。結果、火災につながる重大な過失を確認できなかったとし、誰も刑事責任に問えないと判断した。

 首里城火災の再発防止策を協議する第三者委員会「首里城火災に係る再発防止検討委員会」(委員長・阿波連光弁護士)は9月、中間報告をまとめた。

 報告では、火災当日は深夜までイベントの準備作業が行われていたが、業者らは奉神門や南殿から電源を引いていたので、火災原因の可能性は低いとした。その上で「(正殿北東にあった)配線またはコンセントなどからの出火、あるいは配電盤の老朽化などを原因とする漏電火災が考えられる。電気関係設備が出火原因の可能性は否定できない」と判断した。

 報告では再発防止策として、ハード(建築物・設備)とソフト(管理・運用)が密接に連動した、総合的な防止策の検討などを求めた。

延焼を防ごうと懸命の消火活動を行う消防隊員
焼け落ちた首里城を見つめる近隣住民ら