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沖縄県民のシーチキン愛なぜ? 箱売り、贈答で人気↗ 食卓に定着“ツナの恩返し”も 


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
沖縄県民に愛されているシーチキン

 首里城火災から1年がたった。この間、首里城の復旧・復興に向け多くの企業から県や那覇市などに寄付があった。その中でもとりわけ話題になったのが、「ゆかりの深い沖縄に恩返ししたい」と2年間で合計1億円を寄付することを表明したはごろもフーズ(静岡市)だった。

 主力商品「シーチキン」の沖縄県民1人当たりの消費量は全国平均の約4倍。1億円の寄付は“ツナの恩返し”とも言われた。なぜ沖縄でここまでシーチキンが愛されるようになったのか、改めてシーチキンと沖縄の関係をひもとく。

 驚きの光景から

スーパーでケース売りされているシーチキン

 「お買い得品」として山積みにされたシーチキンのケース。沖縄のスーパーでは日常的に見られるが、実はこのケース販売は沖縄オリジナル。県外の主流は3缶、4缶のパック品だという。

 沖縄の食卓に欠かせないシーチキンが県内で販売されるようになったのは1972年前後。もともと、沖縄では海外産のツナ缶が食されていたこともあり、順調に売り上げを伸ばしたが、シーチキンが圧倒的に支持されるようになったのは、このケース販売がポイントだった。

 沖縄営業所の担当者は87年ごろ、中元・歳暮で県民がお米を持って旧盆や年末年始の親戚周りをする光景を目にした。県外の中元・歳暮は自分では買わないちょっといいものを贈るのに対し、沖縄では日常的に食するお米などを持参して、親戚回りをする。

 この驚きの光景からシーチキンの新たな販売方法が生まれた。当時、シーチキンの販売は1缶売りが主流だったが、沖縄の消費者はまとめ買いしていた。缶詰は日持ちすることや、24缶にしても手頃な価格帯で販売できることなどから、担当者はシーチキンをギフト用として箱売りすれば「いける」と判断。シーチキンLフレーク24缶、マイルド24缶を包装紙で包み、贈答用として販売した。

 年間1631万缶

 スーパーに陳列されているツナ缶を贈答用として売り出したのははごろもフーズが初めて。認知度を高めるため、営業担当が店頭に立ち、売り込みをしたという。

 営業担当の読みは当たる。それまで調理用素材として位置づけられていたシーチキンが贈り物として取り上げられることで、製品価値が向上。また箱でもらうことにより、家庭内使用頻度が増加した。現在も8月、12月の販売数は他の月よりも多い。

 2017年度には年間1631万缶が県内で消費されたシーチキン。これだけ県民に愛される要因について、はごろもフーズ沖縄営業所は「ツナやポーク缶をよく食べていた米国文化の影響や、暑い地域のため、保存のきく缶詰が重用されたからではないか」と見ている。

 さらに、沖縄ではシーチキンの油を切らずにチャンプルーやニンジンしりしりに使用することが多い。「調味料としての活用が家庭の味として長く愛用いただいている一因ではないか」と分析している。
 (玉城江梨子)