<米大統領選と沖縄>アジア戦略見直しも 知事は下院議員とパイプを 沖国大准教授・野添文彬


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野添 文彬

 バイデン政権になっても中国政策が厳しくなることに変わりはない。民主党も共和党も中国敵視では一致している。日本に安全保障上の分担を求め、沖縄の基地負担は変わらないのではないかという前提の上で、変化の契機となり得る以下の点に注目したい。

 ミシェル・フロノイ氏の国防長官就任が有力視されている。これはトランプ政権の軍事戦略をほぼ継続するという意味になる。一方、フロノイ氏の論文を読むと、より地理的に分散した兵力、より小規模な部隊配備が中国のミサイル能力に対応する上で必要だと指摘している。つまり、固定的な兵力の配置より、一時的な配置の必要性を挙げている。その視点から考えると、沖縄の米軍基地について見直す余地があるかもしれない。

 米連邦議会は上院は共和党、下院は民主党が優位だが、バイデン政権がまず経済や新型コロナウイルス対策に重点を置く中で、トランプ政権で膨らんだ国防予算が減ることはないかもしれないが、上下院の拮抗(きっこう)で一定額より増えない可能性はある。フロノイ氏はサイバーや無人機、ミサイル防衛に投資すべきと主張しており、限られた額の中で既存の予算を減らす必要が出て来るかもしれない。

 米軍全体もそうだが、海兵隊は今後予算が増えないと見据えた上で、戦車部隊の廃止や、対中国戦を想定し、前方で攻撃や給油の拠点を設ける作戦構想「遠征前方基地作戦(EABO)」を試行している。海兵沿岸連隊の新編成は沖縄の負担増になるかもしれないが、2006年、12年の米軍再編の見直しが少しずつ始まっているのかもしれない。アジア太平洋地域の戦略を、より本格的に見直す可能性もある。

 また、下院民主のプログレッシブ(進歩派)、人権をより重視する左派の意見がバイデン政権に届きやすい環境になるのではないか。沖縄側の人権重視をプログレッシブに伝えることで、沖縄の意見が通りやすくなるかもしれない。

 このような状況下で、県は望ましい軍事体制、兵力体制について意見が言えるよう分析や提案を考えておくべきだろう。コロナ禍で訪米は難しいと思うが、玉城デニー知事は就任以来、市民に訴え掛けることを得意としている。ワシントン事務所も活用し、米国の市民運動にパイプを作り、プログレッシブの下院議員とつながりを作る必要がある。
 (談)