大規模感染「素地はまだある」 沖縄・中部病院対象の調査 免疫獲得ほぼなく


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調査結果から「大規模感染の素地はまだある」と指摘する水本憲治特定助教=26日午後、県庁

 新型コロナウイルス感染症に関して県立中部病院の高山義浩医師らは26日、同院の救急外来患者を対象に10~11月に抗体検査を実施したところ、0・3%が陽性だったと発表した。調査対象が限定されていることや、統計学的に生じる誤差を踏まえる必要があるが、新型コロナの感染歴があり、免疫を持つ人がごく一部にとどまるという実態が浮かび上がった。

 調査に関わる京都大の水本憲治特定助教(感染症疫学)は「ほとんどの人が(新型コロナの)免疫を獲得しておらず、大規模感染の素地はまだある」と指摘する。

 高山医師らの調査は、中部病院をはじめ県内の公立病院が参加して共同で進めている研究の一環。新型コロナ感染後に血液中に作られる抗体の量(抗体価)を調べ、その陽性率から感染がどの程度流行しているのか把握する狙いがある。

 中部病院ではこれまで2回、調査を実施した。7月の1回目は392人の検体を調べ、陽性はゼロだった。2回目の調査(10~11月)は719人の検体のうち、70歳以上2人の陽性が確認された。統計学上の誤差を踏まえる必要があるが、0・3%が感染歴を持つとの結果が得られた。陽性の2人とも、実際にコロナに感染し入院歴のある人だった。

 新型コロナの病態については不明な点が多く、抗体がどの程度の期間、体内で持続するかも解明されていない。調査対象が採血を要する救急外来患者に限定される点も考慮する必要があるが、現段階で得られている結果から高山医師は「流行がわれわれの知らないところで起きていたということではなさそうだ」と話している。

 中部病院では今後、冬の流行が過ぎた段階で3回目の調査を予定している。同院を含む県立5病院で、検査規模は3千人程度となる見通し。