「32軍壕の調査公開を」沖縄県内外から2127人署名 戦跡保存ネットワークなどが県へ提出


この記事を書いた人 Avatar photo 上里 あやめ
沖縄県に32軍司令部壕の学術調査と保存・公開に関する要望書と署名を提出する戦争遺跡保存全国ネットワークの出原恵三共同代表(左から2人目)と沖縄平和ネットワークの北上田源事務局長(左)=21日、県庁

 戦争遺跡保存全国ネットワークと沖縄平和ネットワークは21日、日本軍第32軍司令部壕の学術調査の実施と保存・公開に関する要望書を、県内外から集めた2127人分の署名とともに県に提出した。「沖縄戦の悲劇を内蔵したまま放置されてきた」と指摘し、文化財指定と発掘調査、段階的な保存・整備を求めた。署名は5月から12月15日までに集めた。

 戦争遺跡保存全国ネットワークは1997年に設立され、戦争遺跡の保存・活用や行政への働き掛けをしている。要望書では、司令部壕を「沖縄戦の実相を今日に伝える『生き証人』であり沖縄戦の悲劇を伝える第一級の戦争遺跡だ」とし、(1)戦争遺跡として文化財指定(2)学術的な発掘調査を実施し成果を公表(3)段階的な保存・整備―を求めた。

 県の名渡山晶子子ども生活福祉部長は近く開く検討委員会で「戦史、文化財、平和学習などの専門家に多角的に議論していただきたい」と述べた。県文化財指定について、金城弘昌教育長は「検討委の議論を踏まえ対応したい」と述べ、諸見友重文化財課長は「周辺にもたくさんの戦争遺跡がある。今後、必要があれば検討したい」と述べた。

 提出後、全国ネットワークの出原恵三共同代表は会見で「学術調査をしないでの保存公開は観光目的に陥りかねず、意味がない。これが最後の機会だ」と強調した。沖縄平和ネットワークの北上田源事務局長は「戦跡が開発や風化によって壊れてしまう。きちんと記録に残せば実態を平和学習で伝えていける」と要望した。県教育庁文化財課によると、県内戦争遺跡は約千件で、このうち市町村指定が24件で県指定はない。