緊急宣言翌日の辺野古変更申請、泡消火剤…基地問題、地元の神経逆なで<沖縄この1年・2020>


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沖縄防衛局が提出した埋め立ての設計変更申請書=4月21日、名護市の北部土木事務所

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、県が独自に緊急事態を宣言した翌日の4月21日、沖縄防衛局職員4人が名護市の北部土木事務所に約2200ページの書類を運び込んだ。名護市辺野古の新基地建設に向け、政府は軟弱地盤の改良工事を盛り込んだ設計変更を認めるよう県に申請した。

 県は感染防止に向け、職員を半数ずつ在宅勤務にしたばかりだった。「コロナ対策に一丸となって取り組む時だ。スケジュールありきの申請は容認できない」。玉城デニー知事は会見を開き反発した。

 地盤が弱いことを示すデータの切り捨てや、照会した専門家会合に示した資料の誤りなど、防衛局の対応には申請前から問題が多数あった。実際、防衛局は申請書で、海底に打ち込む砂ぐいの本数や太さなど改良工事の詳しい内容を明示しなかった。

 設計変更を巡り県に届いた意見書は約1万8千件に上る。うち名護市民からの579件は全て基地建設や設計変更に否定的な意見だった。玉城知事は意見書の内容を審査に反映させる方針を示している。

 米軍基地の存在は2020年も県民を脅かした。1月に米海軍のヘリコプターが本島東沖に墜落。2月には戦闘攻撃機から給油口カバーが落下、大型輸送ヘリがつり下げていた鉄製の構造物も落下した。戦闘機から重さ3・6キロの金属製部品が落ちる事故も8月にあった。

 4月、普天間飛行場から有害性が指摘される有機フッ素化合物PFOSなどを含む泡消火剤約22万7千リットルが流出した。原因は米軍のバーベキューだった。6月には嘉手納基地内の危険物を取り扱う施設で火災が発生し、塩素ガスの粒子が放出された。

 7月に基地内で新型コロナウイルスのクラスター(感染者集団)が発生した。その後、米軍は厳しく構成員の行動を規制したが、10月下旬からは米軍関係者の事件が連発し、11月末までの約1カ月で19件に上った。事件や事故のたびに県は抗議しようと米軍代表者を県庁へ呼び出したが、米軍が応じることはなかった。 (明真南斗)

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