【深掘り】辺野古新基地建設 曖昧姿勢続く名護市長 軟弱地盤も言及回避


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辺野古新基地設計変更に関する市長意見について答弁する渡具知武豊名護市長=21日、名護市議会議場

 沖縄防衛局による辺野古新基地建設の設計変更申請の埋め立て地用途変更について「異議はない」とした渡具知武豊名護市長の意見が市議会で否決された。議長を除く市議25人中13人を占める野党が反対した。渡具知市長は2018年の市長選以来、新基地建設に対して「容認でも反対でもない」と立場を明確にしていない。今回も軟弱地盤に触れないことで新基地への言及を避けたとみられる。市長の姿勢について野党市議は「市民生活への影響すら考えないのは責任放棄だ」と批判する。一方、2期目を視野に与党側からは「そろそろ容認を打ち出した方がいい」との声も出ている。 (岩切美穂)

■解釈  

公有水面埋立法は、埋め立て地の用途変更について申請の縦覧と地元市町村長の意見聴取を定めている。今回、防衛局は埋め立て地用途変更と、軟弱地盤や地盤改良工事の内容などの設計概要変更を一つの申請で提出したため、県もまとめて手続きを進めている。

 市長意見について、県は本紙の取材に対し用途変更に限定した照会ではないと説明した。用途変更が意見照会の根拠だが全体が関連しているとの考え方もできるためだ。一般の利害関係者から意見を募った際も軟弱地盤や改良工事の内容に関する意見も受け付けた。

 名護市は県からの意見照会を「用途変更のみについて問われた」と解釈し、設計概要変更に触れなかった。用途変更が意見照会の根拠となることを逆手に取った格好だ。市は公有水面埋立法の解釈を国土交通省に照会し「(市の解釈は)間違いない」とお墨付きを得ている。設計概要変更について意見を述べることもできたが、述べなかった。

■誰のため

 野党市議の一人は「軟弱地盤に触れることで新基地への立場を明確にすることを避けた。新基地建設を傍観する市長の姿勢が鮮明に表れている」と強調する。

 辺野古移設を容認した比嘉鉄也氏、岸本健男氏、島袋吉和氏の歴代3市長を引き合いに「3氏は移設を受け入れたが、市民生活や環境への影響については言及した」として「新基地への姿勢がどうであれ、市民への影響を考え、意見するのが市長の責任だ。それを避けるなら、誰のための市長か。法で規定されていないから意見を述べなくていい、という話ではない」と疑問を投げ掛けた。

 来年2月で就任3年を迎える渡具知市長。与党市議の一人は市長意見について「県の諮問は用途変更だけだ。問題ない」と擁護しつつ「そろそろ基地容認を表明した方がいいとの支持者の声がある。基地や北部振興予算で国と交渉しやすくなる。曖昧(あいまい)なままでは対等に話ができない」と語る。

 渡具知市長の就任後、国は名護市へ再編交付金の交付を再開した。市長が「法令にのっとって対応する」と移設手続きに事実上、協力する考えを示したためだ。市長は再編交付金を使い、給食費と保育料、子ども医療費の無償化を実行した。

 先の与党市議は「しかしその次が無い。2期目へと実績を重ねるためにも政策を打ち出すべきだ」と指摘。「結果を出さなければ、前市長との間に付いた3500票の差が、次はどう転ぶか分からない」と懸念を示した。

 新基地建設に対する、渡具知市長の今後の姿勢が注目される。