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2020年の沖縄県政は、新型コロナウイルス感染症の流行による医療体制や経済、社会生活への対応に翻弄(ほんろう)された1年だった。県は医療と経済の両輪維持を目指すが、流行の収束や経済回復の展望は見通せない。22年度からの新たな沖縄振興計画策定に向けた取り組みが続く中、政府は米軍普天間飛行場移設に伴う名護市辺野古の新基地建設で設計変更申請を県に提出するなど、新基地建設を強行し続けた。県内の米軍基地で新型コロナ感染者が続出し、普天間飛行場の泡消火剤流出事故の発生など、新たな基地負担や日米地位協定の不備が改めて浮き彫りになった。一方、19年10月に焼失した首里城は正殿などの再建計画に道筋がつき、再建への希望をつないだ。
<新型コロナ>感染5000人超、収束見えず
4月20日と7月31日に出した県独自の緊急事態宣言をはじめ、玉城県政の1年は新型コロナウイルス感染症への対応に追われた。
県内で初めて、新型コロナ陽性者が確認されたのは2月、クルーズ船を下船した乗客が利用したタクシーの運転手だった。国内外で感染が拡大し3月、沖縄発着の海外航空路線は全便運休した。
患者増に伴い、県は4月、新型コロナ対策本部に「総括情報部」を設置、医療体制の調整やPCR検査拡充などの業務を担った。政府の緊急事態宣言に続き、県も独自の宣言で遊興施設などの休業や渡航自粛要請に踏み切った。
5月に入り、新規感染者ゼロが続き、玉城デニー知事は緊急事態宣言を解除した。事業の継続と雇用の維持を図るための経済対策などを示した。経済界から水際対策強化の要望が上がったが、有効な対策が取れないまま、7月に入ると県内の米軍基地で感染者が急増。飲食店や医療機関、福祉施設でクラスター(感染者集団)も相次いだ。県は8月、2度目の緊急事態宣言を出した。
県は検査体制拡充や病床確保などに取り組むが、会食会合や家庭内感染が広がり、玉城知事は11月、「第3波」の認識を示す。医療崩壊を防ぐため、12月に地域限定の営業時間短縮要請に踏み切った。県内の累計感染者は5千人を超え、死亡者も80人に。年末に小規模離島の伊平屋村で初めてのクラスターも発生した。
11次に渡るコロナ対策関連の補正予算は総額約1470億円に上り、医療と経済、県民支援の取り組みが続く。感染収束や経済回復の道筋が見通せないまま、新しい年を迎える。
<新基地・軍港>軍港移設、2市と合意
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米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古の新基地建設で、沖縄防衛局は4月、県に設計変更を申請した。現場の大浦湾で、軟弱地盤が見つかったことが主な理由だ。防衛局は地盤を安定させるため工事計画の変更を目指しているが、新基地建設に反対する玉城デニー知事は申請に応じない構えだ。
県は現在、申請の内容を審査中。9月には申請内容を公開し県民らからの意見を募った。現在は名護市など関係団体からの意見も求めており、これらを踏まえた最終的な判断は年度をまたぐ可能性もある。
那覇市の米軍那覇港湾施設(那覇軍港)を巡る動きもあった。これまで軍港代替施設の移設先は、県や那覇市の推す浦添市の北側案と浦添市が主張する南側案で意見が分かれていた。
しかし8月、防衛局が突如として県や両市などに南側案は「米軍が難色を示している」と伝達。これを受け松本哲治浦添市長は北側案に賛意を示した。
議論が加速するかと思われたが、玉城知事は10月、来県した加藤勝信官房長官に「軍港の返還を前倒しして進めてほしい」などと先行返還を要望した。軍港移設に関する玉城知事の政治姿勢は県議会で論戦となっている。
<沖縄振計>新振計案、来月公表
2021年度で現行の沖縄振興特別措置法(沖振法)の期限が切れるため、県は同法や税制優遇措置などの延長を政府に求め、22年度からの新たな沖縄振興計画の策定へ向けた作業を本格化させている。手始めに公表したのは現振計を検証した総点検報告書だ。現状や課題を分析し、次期振計策定の必要性を明示した。続いて沖縄の中長期的な方向性を示した「新沖縄発展戦略」も発表した。アジアに近い沖縄の地理性などの特殊事情を生かし、「日本経済再生のけん引役」となることを描いた。県はこれらを基に次期振計の骨子案を年内にまとめた。来年1月に公表する。
玉城デニー知事は10月、新たに就任した菅義偉首相と会談した際、21年度の沖縄関係予算や新たな沖縄振興策についての配慮を求めた。
政府は18日、21年度の沖縄関係予算を18年度から4年連続同額となる3010億円と決定した。県や市町村が増額を求めていた一括交付金は981億円で、制度創設以降初めて1千億円を割り込んだ。
県は11月、次期沖振法の制定を見据え、「沖縄らしいSDGs推進特区」の創設や沖縄科学技術大学院大学(OIST)を核としたスタートアップ企業支援策など、計118の制度の新設・拡充を国へ提言すると発表した。
<基地被害>汚染物質 生活脅かす
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沖縄近海での墜落や部品落下など米軍機の事故が相次いだ。事件や事故の度に県は抗議しようと米軍代表者を県庁へ呼び出しているが、米軍が応じることはなかった。県議会や関係市町村・同議会は抗議決議を繰り返し、関係機関に再発防止を求めた。
汚染物質も県民の暮らしを脅かした。普天間飛行場から4月、有害性が指摘される有機フッ素化合物を含む泡消火剤が流出した。6月には嘉手納基地の危険物を取り扱う施設で火災があり、有害な塩素ガスが放出された。
7月に普天間飛行場とキャンプ・ハンセンで新型コロナウイルスのクラスター(感染者集団)が発生。県は米軍との情報交換や検疫方法の改善要請など対応に追われた。日本側の検疫を適用できないという日米地位協定について、県は改定するよう求めたが実現してない。
<県内政局>県議選で与野党伯仲
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玉城デニー知事の「中間評価」に位置付けられた6月の県議選は県政与党の「オール沖縄」勢力が過半数を維持した。玉城県政下では、2018年9月の知事選以降、19年4月の衆院3区補欠選挙、同7月の参院選に続く勝利となったが、与党側は現職4人が落選するなど与野党構成は、より伯仲する結果となった。玉城知事はこれまで以上に難しい県政運営を強いられている。
改選により県議会の与野党構成は与党が25議席、自民、公明などの非与党が23議席となった。県議選を巡っては候補者擁立の過程で与党内にあつれきが生じた。その結果、県議会議長選挙では、玉城知事と距離を置く会派おきなわの赤嶺昇氏が野党自民と中立会派の公明、無所属の会の後押しで、与党3会派が推した崎山嗣幸氏を破り、議長に選出された。与党内の不和はいまだ解消されておらず、今後の選挙においても不安材料を抱える。
2021年は1月17日の宮古島市長選を皮切りに、浦添、うるまの3市長選と衆院選が実施される。選挙結果は2年後の知事選にも大きく影響を与えるとみられる。与野党の攻防は新年から激しさを増しそうだ。
<首里城>26年度完成へ 再建作業進む
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昨年10月末の火災で焼失した首里城は、再建へ向けた作業が着々と進む。県は4月に9項目からなる「首里城復興基本方針」を公表した。
首里城を核とした歴史的なまちづくり「新首里杜構想」の策定や首里城地下の第32軍壕の公開を検討することなどを盛り込んだ。その後も有識者懇談会を開催し、2020年度末に基本計画を策定する予定だ。火災で焼失した建物群は国営公園区域にあるため、国は主にハードの再建を担い、県は主に寄付金の活用やソフト面での防災・まちづくりなどを担当する。
県警と那覇市消防局の火災原因の調査では不明という結果になった。県は第三者委員会「首里城火災に係る再発防止検討委員会」を立ち上げ、検証を進める。同委員会は9月に中間報告をまとめ、ハードとソフト面が連携した防火体制の構築を提言した。沖縄美ら島財団に一括して指定管理を委託する、現在の方式の変更も視野に議論を進める。
県は防火対策の一環として、那覇市首里で整備予定の「中城御殿」に首里城に保管される美術工芸品の一部移転も決めた。国は正殿の本体工事に22年度から着手し、26年度の完成を目指している。
<人権・平和>沖縄戦 問われた歴史観
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「誰一人取り残さない共生社会」の実現を掲げる玉城デニー知事は県議会9月定例会で、国籍や人種、性別、性的指向などを理由とする差別の解消に向け、「性の多様性宣言(仮称)や不当な差別的言動の解消に向けた、いわゆるヘイトスピーチ規制条例の制定を検討している」と明言した。
今月25日の報道各社のインタビューでも、ヘイトスピーチについて「宣言を出すのか、すぐ条例にするのかについては検討している」との考えを示した。
一方、新型コロナウイルスの感染拡大が沖縄戦終結75年の節目に影響を与えた。
6月23日の「慰霊の日」の沖縄全戦没者追悼式について、玉城知事は5月、規模縮小とともに、平和祈念公園の広場から国立沖縄戦没者墓苑への会場変更を発表した。
沖縄戦研究者らは、天皇や国家のための「殉国死」の追認につながりかねないと懸念した。
玉城知事は感染状況の落ち着きを理由に、会場を広場に戻したが、県の平和行政や沖縄戦への歴史認識が問われる事態になった。