沖縄民謡界の重鎮、大城美佐子さん死去 84歳 「絹糸の声」 故嘉手苅林昌さんの名相方


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「琉球音楽祭」でトリを務めた大城美佐子さん=2019年5月11日、那覇市泉崎の琉球新報ホール

 沖縄の民謡歌手の重鎮で、国内外で精力的に活動した大城美佐子(おおしろ・みさこ)さんが17日、那覇市内の自宅で急性心筋梗塞のため死去した。関係者によると18日未明、自宅で横たわっているのが見つかった。84歳。大阪市大正区出身。告別式は家族のみで執り行う。

 大城さんは1936年7月、大阪府で生まれ、その後名護市辺野古で育った。祖父や親戚に古典音楽の名人がおり、幼少時代から三線を弾いていた。20歳のころ、琉球古典音楽野村流や琉球舞踊を習っていた。

 沖縄民謡界に多大な功績を残した故知名定繁さんに弟子入りし、62年デビューした。シングル曲「片思い」では「絹糸の声」と評され大ヒットとなった。故嘉手苅林昌さんの名相方としても活躍した。

 99年公開の「ナビィの恋」や「夢幻琉球つるヘンリー」など映画にも出演。2017年には芸道60周年を記念したアルバム「島思い~十番勝負」をリリース。同年、第15回宮良長包音楽特別賞(琉球新報社主催)を受賞した。那覇市で民謡ライブハウス「島思い」を経営していた。若手の唄者との共演や指導にも尽力した。

「情け深く母のよう」 関係者、訃報にショック

「島唄継承VOL.2知名定繁の世界」でセッションする大城美佐子さんと知名定男さん=2016年12月11日、沖縄市のミュージックタウン音市場

 「絹糸の声」と評される歌声で長年、舞台に立ち続けてきた大城美佐子さんは、女性の民謡歌手の先駆者だった。突然の訃報に芸能関係者はショックを隠せない様子で「残念でならない」「11月に会った時には元気そうだったのに」と驚きと追悼の言葉を寄せた。

 民謡歌手・音楽プロデューサーの知名定男さんは正月に大城さんと顔を合わせていた。「少し痩せていたが元気そうだった。僕よりも年上なのに『年寄りくさくならないようにしようね』と言って笑い合った」と言葉を詰まらせた。

 父・定繁さんに弟子入りした大城さんを「美佐ねえ」と呼び慕った。故嘉手苅林昌さんとのコンビでは「いたずらっぽく歌遊びをする嘉手苅さんを美佐ねえは見事に受け止めていた」と振り返った。

 キャンパスレコード代表の備瀬善勝さんは人柄に思いをはせる。「女性歌手が少ない時代に活躍し、先駆者となった。大御所の先輩の所にも遠慮せず足を運んでいた。思ったことをハキハキ言う人だった」と話した。

 大城さんは若手の育成に力を注いだ。弟子で民謡歌手の堀内加奈子さん(43)は「よく『情けで歌いなさい』と話していた。情景が浮かぶような、語りの面が強い歌だった」と教えを振り返った。「情け深い方で、師匠というより沖縄の母親のように接してくれた。感謝の一言に尽きる」と力を込めた。