prime

脱「ビジネスホテル」で利益6割増 「除菌1.3倍」で客離れに歯止め パームロイヤルNAHA<変革沖縄経済>5


この記事を書いた人 Avatar photo 嶋野 雅明

 過当競争が進む那覇市内のホテルの中でも、既存の経営スタイルから脱却を図り、コロナ禍を乗り切ろうとするホテルがある。国際通りの中心部に位置するホテルパームロイヤルNAHA(那覇市)は、徹底した差別化と収益構造の改善で収益力を高めている。

国際通り周辺ホテルでは珍しい地上プールを併設するホテルパームロイヤルNAHA=那覇市牧志

 新型コロナの流行が始まって以降、那覇市内のホテルの客室稼働率は軒並み30%以下に落ち込み、一桁台となることも珍しくなかった。コロナ以前から、定番観光コースをバスで巡る団体型からレンタカーで移動する個人型に旅行スタイルが移り変わったことで、那覇市内の素通りも指摘されてきた。さらにコロナ禍で密な都市部を避ける傾向があり、Go To トラベルなど旅行喚起策が始まっても客が北部に集中するなど集客に苦戦している。

 同ホテルは2020年、那覇市内でも比較的高い稼働率を保った。専門家の監修のもとで、宿泊客に発熱者が出た場合の専用フロアや導線を整備するなど先進的な取り組みを進め、メディアへの発信を強化した。客室は清掃・除菌に通常の1.3倍の時間をかけた「徹底除菌ルーム」として販売するなど、客離れに歯止めをかけた。

ホテルパームロイヤルNAHAの外観=那覇市牧志

 高倉直久総支配人は「チェーンホテルに比べて知名度は劣るが、感染対策をメディアに積極的に発信した。コロナ禍で苦戦はしているが、予約の下落幅を縮小できた」と語る。SNSへの発信も活発に行い、オンライントラベルエージェントの楽天では五つ星の評価を獲得している。

 05年にビジネスホテルとして開業したが、3年前からシティホテルへのブランド転換を図っている。安い価格で稼働率を稼ぐスタイルから、客室単価を上げて収益を高める方法に切り替えた。シングルの客室がメインだったが、ファミリー層などを取り込めるよう18年に全室ツインの新館を開業した。客室単価の平均は1泊7千円台から、現在は1万1千円ほどに上がっている。新館に限れば繁忙期は1泊2万~3万円で販売している。

 高倉氏は「ビジネスはどれだけ需要が高くても、価格の上限が決まっている。ビジネスホテルの枠から出たかった」と話す。

 宿泊料金設定の方法も変えて、収益の最大化を図ってきた。従来は予約係のスタッフが長年の経験と勘で宿泊価格を設定していたが、過去のデータから1年先までの需要動向を細かく予測し、100円単位で価格を変動させる方法を導入した。細かく料金設定をすることで、価格を上げられる日も増えた。季節などで変わる料金体系は、従来の8段階から25段階まで細分化した。

 利益は6割増しとなり、従業員への賞与も出せるようになった。収益を向上させたことで積極的な設備投資が可能となり、国際通り周辺のホテルでは珍しい屋外プールを開業するなど独自性を発揮している。

 現在は、緊急事態宣言やGo To トラベル停止のあおりを受け厳しい状況が続くが、高倉氏は「コロナが収束した時にはV字回復を目指す。お客さんに満足してもらえるような質の高いサービスを磨く」と前を向いた。
 (変革沖縄経済取材班 中村優希)

【関連記事】
▼来年元日は既に満室「百名伽藍」の逆転発想
▼プライベート機と独立ヴィラで3密とは無縁「ジ・ウザテラス」
▼ハイアット、星のや…ブランドホテル進出の商機と懸念
▼「体力持つか…」老舗・沖縄ホテルを襲うコロナの逆風
▼脱観光業「宿泊客ゼロでいい」ヤンバルホステルは人生を提供する