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プライベートジェットで来県、独立ヴィラで「3密と無縁」 ジ・ウザテラス<変革沖縄経済>2


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

written by 中村優希

 新型コロナウイルスで急ブレーキがかかった沖縄観光だが、世界の富裕層をターゲットにした競争力のある国際リゾート地へと飛躍を遂げている。宿泊客のプライベートを守る高級ホテルの内側には、国内やアジアのセレブが通う“別世界”が広がる。

ジ・ウザテラス ビーチクラブヴィラズのフロント前。ここに座って夕日や海の景色を眺める宿泊客もいる=15日、読谷村宇座

 ホテルやレストランなど世界の一流施設だけが入れる国際組織「ルレ・エ・シャトー」に、沖縄で唯一加盟しているホテルがある。ザ・テラスホテルズ(那覇市)が経営する読谷村の「ジ・ウザテラス ビーチクラブヴィラズ」だ。

 ウザテラスには月に1~2組、プライベートジェット機で訪れる宿泊客がいる。那覇空港の専用場所にプライベート機が降り立つと、ホテルが手配した運転手付きのハイヤーが待ち受け、読谷村まで送迎する。滞在中の移動手段であるレンタカーもホテルで手続きができ、混み合う空港で待たせることはない。

 クルーザーを1組限定で貸し切るサービスも用意しており、シェフが乗船して海上でバーベキューを振る舞うなど、優雅な沖縄時間を提供する。

ジ・ウザテラス ビーチクラブヴィラズの客室内。全室にプールが付く。プールを挟んだ向かいにベッドルームがある=15日、読谷村宇座

 ウザテラスは一つ一つが独立したヴィラタイプで、それぞれの宿泊客のプライベートが保たれた48棟の客室がある。全室にプールが付き、滞在期間を部屋だけで過ごす客も多い。

 最高級の客室「プレジデンシャルヴィラ」は、1泊約100万円の宿泊料だ。2016年の開業時には、どれだけの需要があるのかと疑問を呈する声もあったという。しかし、現在ではアジアや欧州からも富裕層が訪れる。

ジ・ウザテラス ビーチクラブヴィラズの客室。独立したヴィラタイプでプライベートが守られる=読谷村宇座

 昨年1月中旬の春節(中華圏の旧正月)には、中国や香港からプライベートジェット機で沖縄を訪れ、1カ月ほど滞在していた客もいた。中国で新型コロナが拡大する中で、安全な場所を求めて来たという。

 その後、日本国内に第1波が襲来した4~6月は、ウザテラスも一時休館に追い込まれた。それでも、営業再開後は前年並みの稼働に持ち直している。

 ザ・テラスホテルズ広報の宮﨑晋一氏は「オープンエアでプライベートも確保されており、密を避けた滞在ができる。安心して過ごせることがコロナ禍でも選ばれる理由だ」と語る。

ジ・ウザテラス ビーチクラブヴィラズのフロントから見える景色。西海岸に面しており、サンセットも眺められる=読谷村宇座

 海外との渡航制限が続く中で、ハワイなどへの旅行を予定していた国内の富裕層が、沖縄旅行に切り替える動きもコロナ禍で新たに生まれている。例年、年末年始はリピーター客が多いが、今年は新規の予約が増えた。新規客からは「長時間飛行機に乗らなくても、沖縄で十分だ」との感想もあったという。

 沖縄観光は1980年代から90年代にかけて、同じ海洋リゾートのハワイやグアムに比べて安くて、近くて、日程も短く済むという「安近短」を売りにした。国内観光客の沖縄ブームの呼び水になったが、観光の安売り体質を定着させることにもなった。

 だが、グローバルな人の動きや近隣のアジア経済の台頭により、沖縄も世界的なリゾート地と品質で競う時代がやって来ている。

 現状では緊急事態宣言の再発令のあおりなどを受け、ウザテラスは2月に一時休館に入ることを余儀なくされている。それでも、宮﨑氏は「旅行に行きたい気持ちは高まっている。観光客は必ず戻る」と確信している。

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