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ブランドホテル「別世界」の盛況 1泊10万、30万円… 県外へ利益流出の懸念も<変革沖縄経済>3


この記事を書いた人 Avatar photo 嶋野 雅明

written by 中村優希

 近年活発化した沖縄観光に着目し、国内外から有名ブランドホテルが数多く進出している。2020年にはヒルトン沖縄瀬底リゾート(本部町)、星のや沖縄(読谷村)が開業した。22年にプリンスホテルが宜野湾市に、23年にはインターコンチネンタル沖縄美らSUNリゾートが豊見城市に開業を予定するなど、今後もホテル開発が続く。ブランド力の高い海外・県外資本のホテルは、コロナ禍でも集客力を発揮している。

客室から見えるハイアットリージェンシー瀬良垣アイランド沖縄のプール=15日、恩納村瀬良垣

 「スイートルームから予約が埋まっていった」。ハイアットリージェンシー瀬良垣アイランド沖縄の酒井宏彰マーケティングコミュニケーションズマネージャーは、コロナ禍にもかかわらず高い稼働率を維持した20年を振り返った。世界的ブランドの同ホテルは、Go To トラベルやおきなわ彩発見キャンペーンに後押しされた旅行需要をつかみ、県内外からの宿泊客でにぎわった。1室8万円台のスイートルームは、10月以降常に予約が埋まっていた。

ハイアットリージェンシー瀬良垣アイランド沖縄の最高級の客室「瀬良垣アイランドスイート」の寝室=15日、恩納村瀬良垣

 1室30万円の瀬良垣アイランドスイート(181平方メートル)は、県独自の緊急事態宣言が終了した9月以降、例年の2割増しで予約が入った。秋には県外のグループホテルから従業員の応援を呼ぶほどに多忙だったという。酒井氏は「連泊も多かった。ゆっくり過ごしたい人が多くリゾートが支持された」と話す。

ハイアットリージェンシー瀬良垣アイランド沖縄のフロント=15日、恩納村瀬良垣

 昨年7月に開業した星のや沖縄は、直後の8月に緊急事態宣言が発令される厳しいスタートとなったが、10月には計画通り6~7割の客室稼働率を達成した。1泊1室約10万円以上という高価格だが、独自の県民割引で地元客を呼び込んだほか、ハワイ旅行に行けなくなった富裕層の沖縄旅行への切り替え需要を捉えた。

 運営する星野リゾートは創業100年を超え、国内外でホテルを展開している。星のやブランドでは、「圧倒的非日常」をコンセプトに、広い部屋や上質な料理などのサービスを充実させている。

全室で海が一望できる「星のや沖縄」の4人タイプの客室フゥシ(星)=読谷村儀間

 全体の観光客が減少する中で強さを発揮する両ホテルに共通するのは、宿泊客の「憧れ」を集めるブランド力だ。県外・海外資本の高級ホテルの参入は、国際リゾート地沖縄のブランドや競争力を高め、雇用を生み出している。一方、競争の激化で地元企業が体力を落としているという課題もある。

 琉球大学国際地域創造学部の獺口浩一教授は「(県外・海外資本の進出で)地元企業が廃業したり、資本が変わったりしてきた。利益は県外に流れ、沖縄に集まっていない」と指摘する。

 海外・県外資本が土地を購入すると地元住民の意向と違う開発になるなど影響が出るため、観光の集積エリアなどを決めて、行政で開発をコントロールする必要があるとする。

 獺口教授は「開発をコントロールできないと地域の資源が失われていく。沖縄の資源を沖縄で守りながら、計画的にホテル誘致や開発をする必要がある」と強調した。

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