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「みんなと違っていてもいい」性の多様性、全学年で学ぶ 糸満・西崎小が絵本を題材に


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全学年共通で題材にした絵本「りつとにじのたね」を紹介する西崎小学校の教諭=1月28日、糸満市西崎の同校

 糸満市立西崎小学校(大湾悟校長)は1月13日、全学年一斉に「レインボーハートプロジェクト授業」を実施した。絵本を通じて性の多様性について教え、人権感覚を養った。LGBT(性的少数者)に関する授業について、県内では各教諭による個別の取り組みは見られたが、学校全体では珍しい。児童らは「みんなと違っていてもいい」と自己肯定感を高め、他者を認めることの大切さも学んだ。同28日に関係者を招いた授業報告会を開き、担当教諭が成果を発表した。

 全学年共通で題材にしたのは絵本「りつとにじのたね」で、かわいいものが好きな男の子のクマ「りつ」が主人公。同級生から笑われたりつは傷つき、「くまの国」から飛び出し、「くろの国」や「つんつんの国」を訪れる。それらの国でも仲間に入れてもらえず、最後に訪れた「にじの国」は誰もが大事にされる国。りつは「ずっといてもいいよ」と言われたが、くまの国へと帰っていく。

発達段階に応じて

 1年生の授業は物語を理解するのが中心。渡久地留美教諭は、りつの絵を拡大して黒板上で動かし、それぞれの国で起きたことを説明した。

 4年担任の與座沙也加教諭は「りつがくまの国に戻ったのはなぜ」と問い掛けた。児童は互いに意見を交わし、「違っていいこと、みんな役に立っていることを教えてあげたかったのかな」などと意見を発表した。

 6年生の授業では、さらに踏み込み「自分の国に帰ったりつは、本当に自分らしく過ごせたのか」を考えた。「いじめっ子が共感してくれないかも」と心配する児童の意見が出た。担任の宮城里沙教諭は「周囲の目を気にする」という高学年の心理を押さえ、授業を進めた。「周りが認めてくれる環境が大切」という考えを引き出した。

 授業後の感想文には「みんなちがってみんないい」(1年、原文のまま)、「違うから助け合えることが分かった」(4年)、「自分らしく生きていれば、いつかはみんなが認めてくれる」(6年)などと書かれていた。

教員研修が契機

 一斉授業のきっかけは、レインボーハートプロジェクトokinawaの竹内清文代表が講師を務めた教員向けの研修だった。受講した教諭3人が各担当クラスで授業を行い、効果を実感した後、全体での実施も提案した。その後、道徳担当や人権担当の教諭らと授業計画を練った。

 大湾校長は「認め合うのは人権教育につながる。他者を認めるのは自分を認めることにもつながり、いじめの防止にもなる」と、全体実施にゴーサインを出した。

 竹内代表は報告を聞き、「活動を始めて4年目。当初から、当事者として私が語るだけでなく、先生方に取り組んでもらいたかった」と涙ぐんだ。LGBTが自殺のハイリスク層でもあることを指摘し、「先生方は授業を通して命を救っている」と話した。