「鉄」をテーマに町の歴史描く 南風原町民劇団「海」が公演


この記事を書いた人 Avatar photo 上里 あやめ
演劇「くるがにぬゆ―鉄ぬ世―」で、沖縄戦の場面で緊迫した演技を見せるただのあきのりさん(左下)ら出演者=1月24日、南風原町立中央公民館黄金ホール

 【南風原】南風原町民らでつくる劇団「海」の第3回公演「くるがにぬゆ―鉄ぬ世―」(南風原町観光協会主催)が1月24日、町立中央公民館黄金ホールで上演された。町与那覇出身のただのあきのり(本名・大城明範)さんら出演者25人が、一致団結して役を演じ、舞台での公演に喜びを感じていた。

 作品は2017年「金城哲夫のふるさと沖縄・南風原町脚本賞」を受賞した近本洋一さんの原案を基に、町喜屋武出身で演芸集団FEC所属の芸人、仲座健太さんが脚本と演出を務めた。

 南風原町にある有名カラオケボックスに訪れた自治会の区長や女性たちの話から、鉄が沖縄に伝わったグスク時代から沖縄戦、鉄筋コンクリートに居住する現代をつないで、豊かさを求めた人々の生活と、命の尊さなどを伝えた。せりふにボケやツッコミ、南風原町民しか分からないような地元ネタなどを取り入れ、観客の笑いを誘った。

 沖縄戦の場面では、手りゅう弾など鉄が人の命を奪う道具として使用されたことや、町出身の自由民権運動家・新垣弓太郎の妻が日本兵に殺害されたことをせりふに織り交ぜ、日本兵が住民を殴る緊迫した場面もあった。また劇中、舞台の後ろのスクリーンに「照屋の舞方」や「兼城の揚作田」「宮平の獅子舞」が映し出され、町内の伝統芸能なども紹介した。

 本公演は昨年上演する予定だったが、新型コロナウイルス感染の影響で2回延期となった。今回、密を避けるため、500席ある座席を来場者111人に減らして上演したほか、動画投稿サイトユーチューブでも生配信を試みた。ユーチューブでは、生配信を含めて、2月3日時点で視聴者数が2千人を超えている。

 前回の劇団「海」の公演を見たことがある町田美貴さん(60)は「以前よりも出演者の演技に熱が入り、成熟している」と絶賛した。仲座さんは「公演ができてほっとしている。コロナ禍なので、出演者全員が集まったのは本番当日だったが、一生懸命演じる姿を会場やユーチューブで見ているお客さんに届けることができて、良かった」と安心した表情で語った。