沖縄「基地密度」で差別明らか 「米軍専用施設70%」に意味はあるか<乗松聡子の眼>


この記事を書いた人 Avatar photo 上里 あやめ

 「日本の面積の0・6%の沖縄に全国の米軍専用基地の70%が集中する」。日本による基地押し付けの不当性を訴えるために多くの人がこの数字を使ってきた。玉城デニー知事は1月半ば、日本政府にこの不公平を是正させるため、「50%以下に」と要請する数値目標を掲げた。

 直後の1月25日、これに呼応するかの如く、「2015年に米海兵隊と陸上自衛隊がキャンプシュワブに陸自の水陸機動団を常駐させると合意していた」という報道が出た。

 米軍基地には米軍が常時使う「米軍専用施設(基地)」と、静岡県の陸上自衛隊東富士演習場など米軍は年に数回しか使用しない「一時使用施設」がある。米軍専用基地を自衛隊と共用にすれば、事実上は負担が増えるのに、理論上は「米軍専用基地」の割合が減ってしまう。

 金武ブルービーチ訓練場での米日合同演習ひとつを取っても、米軍と自衛隊の一体化が加速していることは明らかだ。辺野古新基地建設も、「中国の脅威」を意識した米日による南西諸島全体の軍備強化の一環だ。これ以上「米軍専用基地」の数字を使い続けることに意味があるのだろうか。

 米国の立法補佐機関である議会調査局(CRS)の報告書では「25%」という数字がよく使われている。直近では2月2日に更新された、最新の米日関係の動向を分析するレポート「IN FOCUS」にも、「在日米軍が使用している施設の25%と、人員の約半数が、日本の総面積の1%に満たない沖縄に所在する」とある。

 この「25%」は、同じ数字を使っているCRSの16年の報告書の脚注から見ても、沖縄県の「沖縄の米軍及び自衛隊基地(統計資料集)」を参考にしているようだ。県のHPにある、20年3月付の統計を見ると、「米軍施設・区域(専用施設および一時使用施設)」は全国で131、うち沖縄が33であるから比率は「25・2%」とある。基地には規模の差が大きいので負担度を示す数値に基地の数を使うことは適切ではないと思うが、これを面積で計算すると、沖縄の負担度は「19・1%」になる。

 不当な基地集中を訴える立場からは、より小さい数字を使うのは不当と感じる。しかし米国議会が立法や政策立案において参考にするCRSの報告書が、米軍と自衛隊の「連合軍」化、「相互運用性」が進んでいる事実に言及しながら、共同使用施設も含めた数字を使っているのは整合性があると言わざるを得ない。米国への訴えはこの点に留意する必要がある。

 しかしいずれの数字を使おうとも、沖縄が日本の0・6%の面積でしかないことを加味した数字でなければ明白な比較はできない。沖縄の過重基地負担が直感的にわかる数字は、同じ面積の上にどれだけの基地があるかを示す「基地密度」であると思う。前述の沖縄県統計資料の数字に加え、日本と沖縄の総面積(国土地理院20年10月時点)を使って計算したら、米軍専用施設および一時使用施設を併せた場合、沖縄の基地密度は県外に比べ39倍であった。米軍専用施設のみで計算したら389倍。それぞれ約40倍、400倍と言っていい。

 どちらにせよ想像を絶する基地押し付けであり、差別である。このことを日本人として心に刻みたい。そして米日政府に訴えるときもこの「基地密度」をもっと強調したいと思う。
 (「アジア太平洋ジャーナル・ジャパンフォーカス」エディター)