【識者談話】最高裁判決、二審よりも厳しい内容 市は真摯に対応を(小林武・沖縄大客員教授)


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小林武氏

 日本は戦前、国家が神道と結びつき、戦争に進むなど痛苦の歴史がある。国や地方公共団体が宗教と結びついてはならないとする政教分離の原則は、常に厳格に考えなければならない。今回の最高裁判決は、それを考慮しつつ住民側の全面勝訴を選んだ。

 政教分離を巡る、最高裁の違憲判決の先例として2010年の空知太神社訴訟がある。北海道砂川市が市有地を空知太神社に無償提供していることは、政教分離に違反するとの判決が出ている。

 最高裁は今回の孔子廟訴訟で、憲法20条3項を根拠として那覇市が土地使用料を全額免除する行為を宗教的な活動だと判断した。全額免除をもって市側が積極的に宗教活動をしたと判断するもので、憲法89条の公金支出を主な根拠とした空知太訴訟とは、その点で異なり、市に対して厳しい判断となった。

 孔子廟訴訟の差し戻し後の二審判決は、土地使用料を免除するかどうかは市長に一定の裁量権があるとしていたが、最高裁は全額請求すべきだと判断した。那覇市や久米崇聖会には厳しく、猶予を設けない判決だと言える。市政への影響もあるだろうが、那覇市は真摯(しんし)に受け止め、対応すべきだ。
 (憲法)

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