【記者解説】「歴史・文化」通じず 施設の個別事情を重視 年一回の儀式に宗教性 孔子廟訴訟


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最高裁判所

 24日の最高裁大法廷判決は、政教分離の原則を巡り、儒教関連施設への初の最高裁判断が下されると注目を集めた。儒教が宗教だと主張する住民側に対し、那覇市側は道徳・学問だと反論していた。最高裁は久米至聖廟(孔子廟)を「宗教性を肯定できる」施設だと認め、市の土地の無償提供は違憲と判断。孔子廟の性質や無償提供の経緯など、那覇市の個別事情を重視し、儒教が宗教かどうかの判断は避けた。

 判決は、孔子廟で年に1回行われている「釋奠祭禮(せきてんさいれい)」が宗教的な儀式だとして、施設の宗教性を認めた。過去の判例では、施設の性質や無償提供の経緯を重視するよう示している。今回もその枠組みを踏襲した。孔子廟は全国各地にあるが、それぞれ状況が異なるため、今回の判決が直ちに大きな影響を与えることはなさそうだ。

那覇市久米の久米至聖廟で行われた「釋奠祭禮」=2019年9月28日

 原告の女性(92)は今回の訴訟の他にも、松山公園内の孔子廟の撤去を巡って土地の明け渡しなどを求める訴訟を起こしており、那覇地裁で係争中だ。住民側の代理人弁護士は、判決後の記者会見で「事実認定に関わる施設の性格、核となる判断が最高裁で出た。地裁で係争中の訴訟にも大いに影響がある」と手応えを強調した。

 全額免除していた土地使用料の扱いなど、今回の判決が市政に与える影響は大きい。係争中の訴訟もあり、市は今後も対応を迫られそうだ。
 (前森智香子)

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