孔子廟の土地無償提供は「違憲」 最高裁「那覇市が特定宗教援助」


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
孔子廟

 儒教の祖、孔子を祭る「久米至聖廟(孔子廟)」のため、那覇市が松山公園内の土地を無償提供していることが、憲法の政教分離原則に違反するかが争われた住民訴訟の上告審判決で、最高裁大法廷(裁判長・大谷直人長官)は24日、「市が特定の宗教に対して特別の便益を提供し、援助していると評価されてもやむを得ない」として違憲と判断した。政教分離を巡る最高裁の違憲判決は3例目で、孔子廟に関する最高裁判決は初めて。

 最高裁は、孔子廟で年に1回行われる「釋奠祭禮(せきてんさいれい)」について、供物を並べて孔子の霊を迎える様子から「宗教的意義がある儀式」と指摘。孔子廟が儀式を実施する目的で設置されたものとし「宗教性を肯定でき、程度も軽微ではない」とした。土地使用料が年間約576万円に上ることなどに触れ、無償提供は憲法20条3項が禁止する宗教的活動に当たると判断した。

裁判長の大谷直人長官

 市側は「沖縄の歴史や文化を伝える教養施設で、観光資源としても重要な役割がある」と主張していたが、最高裁は「無償提供の必要性や合理性を裏付けるものとは言えない」と退けた。訴訟には、施設を管理する一般社団法人「久米崇聖会」も市側の補助参加人として加わった。同会は中国から渡来した職能集団「久米三十六姓」の子孫で構成される。

 差し戻し後の二審判決は、無償提供を違憲としつつ、土地使用料を免除するかは市長に一定の裁量権があると判断し、請求額は明示しなかった。最高裁は、那覇市が使用料を全額免除したことは違憲と判断した。

 大法廷を構成する裁判官15人のうち14人が違憲と判断。林景一裁判官は「政教分離違反と判断すると、歴史研究・文化活動についての公的支援の萎縮効果など、弊害すらもたらしかねない」とする反対意見を付けた。

【関連ニュース】

那覇市長「違和感ある」 管理久米崇聖会も「残念」 孔子廟訴訟の違憲判決
【記者解説】「歴史・文化」通じず 施設の個別事情を重視 年一回の儀式に宗教性
【識者談話】最高裁判決、二審よりも厳しい内容 市は真摯に対応を(小林武・沖縄大客員教授)