【深掘り】辺野古埋め立てへ南部土砂採掘 「禁止」の知事判断に注目 全国で事例ゼロ


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辺野古・埋め立てや護岸工事が進められる新基地建設現場=2020年9月、名護市辺野古の米軍キャンプ・シュワブ沿岸(小型無人機で撮影)

 沖縄戦犠牲者の遺骨が多く含まれる南部地域の土砂を採掘して名護市辺野古の新基地建設に使うことに対し、県内から反発が起きている。これにどう対応するか、玉城デニー知事の判断に注目が集まる。県は自然公園法に基づいて採掘を禁止・制限する措置命令が出せるかどうか検討している。

 沖縄戦遺骨収集ボランティア「ガマフヤー」の具志堅隆松代表がハンガーストライキに入った1日朝、玉城知事は見解を問われ「政府に対する意思の表れだ。南部一帯が県民にとって特別な場所だとしっかり分かってほしい」と語った。県の対応については「取り得る対応をしっかり確認している」と答えた。

 現場の土砂採掘予定地は糸満市米須の沖縄戦跡国定公園内にある。国定公園の景観保持について自然公園法に基づく措置命令権のある県は、同法33条2項に基づく措置命令などを事業者に出せるかどうかを検討している。

 県自然保護課によると、措置命令の内容は採掘行為の禁止、制限、景観保全措置の要求など幅がある。現状は採掘業者が出した開発届を形式審査している段階で、内容の精査には入っていない。形式審査を経て業者の届け出を受理した場合、県は原則として30日以内に対応を判断する必要がある。

 県が参考にしている環境省の処理基準に基づくと、土砂採掘などの際に地表から削っていく「露天掘り」が眺望に著しい支障を及ぼすことなどが懸念される場合、採掘を禁止する措置命令を出すことができる。ただ、既に鉱業権が設定されている区域で別の方法を採るのが「著しく困難」な場合、措置命令の対象から除外される。

 県によると、鉱山での採掘行為について、景観の保全を理由に自然公園法に基づく措置命令が出た事例は全国でもない。自然公園法が事業者に求める開発の届け出は許可ほど規制が厳しいわけではない。

 県幹部は「届け出制なので、どこまで強い権限で縛るのかは微妙だ」と、判断の難しさを口にする。一方「県は県で判断することが法で定められている。他の事例との比較というより、それぞれの状況に応じて個別に判断するものだ」とも話し、県側の権限を担保しながら慎重に検討を続ける意向を示した。

 県政与党幹部の一人は県の対応について「これまでの対応との整合性も問われる。よりによって米軍基地の建設に使うことは県民としては許せないが、法的な枠組みとしては土砂の利用目的を判断材料にできず、行政としてはハードルが高い」と県の難しい立場をおもんぱかった。最終的には国に方針変更を求めていく考えを示した。

 一方、玉城知事に近い関係者の一人は「知事は何とかしたいという思いを持って実際にどんな対応を取れるか検討している」と解説する。「整合性を問われて裁判などの話になったとしても、受けて立つぐらいの覚悟を持って対応すべきだ。それは県民の理解を得られるだろう」と強調した。

 (島袋良太、明真南斗)