「賛成できない」「やめてほしい」…本島南部の土砂採取、戦争体験者らも問題視


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 名護市辺野古の新基地建設の埋め立てに使う土砂を本島南部から採取する計画の断念を求め、沖縄戦遺骨収集ボランティアの具志堅隆松さん(67)が、那覇市の県庁前で続けるハンガーストライキが3日で3日目となった中、沖縄戦体験者や戦没者遺族からも南部の土砂採取を「やめてほしい」という声が高まっている。中止を求める署名約2000筆が集まったことも、ハンストの現場で報告された。

南部の土砂採取に「賛成できない」と語る元白梅学徒の中山きくさん=3日、糸満市真栄里の白梅之塔

 沖縄戦に動員され、傷病兵を看護した中山きくさん(92)は3日、県立第二高等女学校の生徒や教職員ら149人の名が刻まれている、糸満市真栄里の白梅之塔を訪れていた。1945年6月4日、軍の解散命令後に戦場を逃げ惑い、多くの同級生、白梅学徒が亡くなった。「南部は全てが霊域だから、土砂を取って埋め立てることに賛成できない。飛行場構築に駆り出され、基地が戦争につながるということを実際に体験したから」と力を込めた。

 2日、岸信夫防衛相は会見で採石業者との契約時に遺骨の取り扱いを明記する考えを示した。父親と叔父を亡くした県遺族連合会の宮城篤正会長(79)はこの日、「沖縄戦で亡くなったのは南部に限らない。県内から土砂採取はできたらやめてほしい」と訴えた。南部で目に見える範囲での収骨は実施済みだとし、「残った細かい骨か、石や土の塊なのか。専門家はともかく素人には分からないのでは」とし、埋もれた残骨を業者が拾い尽くすのは難しいとの認識だ。

 県保護・援護課によると、遺骨を含む土砂の使用を規制したり、遺骨収集の観点から開発を規制したりする法律はない。県担当者は「遺骨に気を付けながら工事をするよう、業者に協力をお願いするしかない。開発に制限をかけてまで、遺骨収集をする権限は県にない」と説明した。

 2016年に施行された「戦没者の遺骨収集の推進に関する法律」(遺骨収集推進法)では、8年間を集中期間とし、国の責務として遺骨収集に取り組むことをうたう。遺骨のDNA鑑定で身元を特定し、遺族に返す取り組みも進められている。具志堅さんは防衛省の土砂採取は「この法律に反する行為であり、人道上の問題だ」と訴えている。