元ウルトラ警察隊、まぶたに福島「風化させぬ」 沖縄の警官、無力感と励まし糧に


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全国からの応援警察官「ウルトラ警察隊」の手記に目を通す嶺井孝允巡査長=4日、那覇市泉崎の県警本部

 那覇署地域課に勤務する嶺井孝允(たかよし)巡査長(35)は2015年4月から2年間、福島県警のいわき中央署復興支援課に出向し、仮設住宅周辺のパトロールなどに従事した。東日本大震災から10年を前に、福島県警互助会などが発行した警察官の手記集「10年の絆」に、全国から派遣された「ウルトラ警察隊」の一員として思いをつづった。「福島は第二のふるさと。震災を風化させずに経験を同僚らに語り継ぎたい」と誓う。

 嶺井さんは出向中、仮設住宅周辺のパトロールや詐欺被害防止に向けた広報、東京電力福島第1原発近くの帰還困難区域で警戒活動にも当たった。福島県警では震災発生日の11日を月命日として毎月、津波被害のあった沿岸地域での捜索活動を続けている。「沖縄県警の代表として被災者の方々の力になりたい」。嶺井さんも金属探知機を手に捜索に当たったが、発生から月日が経過していたこともあり、遺骨や遺品を見つけることはできなかった。

 被災者の力になれていないと感じ、自信を失うこともあったが、被災者との交流が逆に嶺井さんを勇気づけた。沖縄県警の腕章を着け、パトロールをしていると被災者からよく声を掛けられた。「避難生活はつらいけど、遠くから来てくれた警察官の方々には本当に感謝している」。温かい言葉に力をもらった。

 原発事故の影響で第2原発がある富岡町から郡山市の仮設住宅に身を寄せていた5人家族とは今でも交流を続けている。2月13日に発生した震度6弱の地震の際にもメールを通じて安否を確認した。

 双葉署管内での警戒活動では原発近隣地域の復興の遅れを肌で感じた。地割れに巻き込まれたままの車、商品がなぎ倒されたままのコンビニ、倒壊し草木が生い茂った家屋。帰還困難区域の光景は今も嶺井さんのまぶたの裏に焼き付いている。

 応援派遣から4年がたち、那覇署勤務となった今も当時を忘れないよう「福島」のロゴが入った手袋を着けて職務に当たっている。今年も3月11日午後2時46分には福島県の方角に向かって黙とうをささげる。被災地の一日も早い復興を願いながら、交流が続く家族との再会を心待ちにしている。
 (当間詩朗)