琉球新報に2004年から連載中の4コマ漫画「がじゅまるファミリー」。10歳のうーまくー(わんぱく)少年マンタを中心に、3世代8人家族が繰り広げる日常をハートウォーミングに描くこの漫画に、ちょっとした変化が起きている。
わかりやすいところでいえば、半月ごとに変わるタイトル横のイラストが3月1日から12日まで「ジェンダー平等の社会へ」のメッセージになった。
その他にも、エプロンとスカート姿が定番だった母親の「てぃだ子」がズボンをはいていたり、料理や洗濯といった家事のシーンに男性陣がごく普通に登場したりするようになった。
作者のももココロさん(53)は社会の変化に合わせて「漫画もアップデートしていきたい」と理由を語る。
■家族の役割を無意識に・・・
きっかけは、琉球新報が今年取り組んでいる「『女性力』の現実」キャンペーン報道だという。政治や行政分野で「女性の力」を発揮する環境が整わない現状を取材し、女性が直面する「壁」を検証してきた。
一連の報道に触れ、ももさんは単行本など自分の過去の作品を読み返した。母親のてぃだ子はスカート姿が多く、家の中ではエプロンを着けて家事もほぼ一人でこなしている。時々父ちゃんの「泡盛(あわもり)」が洗濯や買い物をすると「母ちゃんは風邪でもひいているのかね」「いいお父さんだね」というような周囲の反応も描かれていた。
ももさんは「お母さんはこういうものというイメージや、固定された男女の役割が無意識に自分の中にあった」と気づいた。
さらに、過去の作品の中で「きょう一日ぐらい母ちゃんを休ませよう」と他の家族が家事を手伝うエピソードも目についた。「『お母さんを助けよう』という特別なことではなく、皆が当たり前に家のことをやるという描き方もできたのでは…」と考えるようになった。
そして家事や子育てに関わる多くのシーンで母親にばかりに役割を担わせていたことを再認識し「固定化されたイメージの再生産をしていた」と反省した。
■笑顔が伝わるのと同じ
「ウチナー漫画家」を名乗るももさんは、デビューしたときから「基地関連などしんどいニュースも多い沖縄で、読んだ人がちょっとでも笑顔になってもらえるよう、笑っている顔の多い漫画を意識して描いてきた」と語る。
漫画の中の笑顔につられて笑顔になるのと同じように、登場人物たちが男女や父親・母親といった固定観念にとらわれず描かれていれば、読者にも伝わるのではないか―。ももさんは、そう考えるようになった。
洗濯物を取り込んで畳むまでの作業を全て母ちゃんにさせなくてもいいのでは?「お酒が好きな男の人」ではなく「お酒好きの人」でいいのでは?など、いったん立ち止まって描くようになった。
「本当に小さなことばかりだけど、見ている人が『男女関係ないんだな』と1コマの中で感じてもらえるよう意識したい」
女性の社会進出が進んでも、「家のことは女性がやる」というジェンダーバイアス(性差に関する固定観念や偏見)は根強く残っている。ももさんは「自分は当事者じゃない、自分の周りにはいないで終わらせず、大変さを感じている人が実際いるというデータに目を向けてほしい」と皆で考え、変えていくことを望む。
そして、何気ない日常を描く漫画家だからこそ、思う。「暮らしをアップデートできるシーンを『わざわざ』描くのではなく『フツ―』に描いていきたい。僕自身も、新しい時代の価値観を積み重ねた作品を描いていけるよう頑張る」
(大城周子)
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