泡盛古酒「老麹」で甘い香り成分アップ 伝承にお墨付き 琉大と石川種麹が研究


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黒麹菌の研究で香り成分の生成メカニズムを解明した(左から)琉球大学の眞榮田麻友美さん、平良東紀教授、石川種麹店の渡嘉敷建孝さん、渡嘉敷正司副代表=9日、西原町の同大

 製造工程が一般の黒麹菌より長い「老麹」を使うと、泡盛古酒の甘い香りの主成分バニリンが増大することが琉球大学と石川種麹店(北谷町)の共同研究で分かった。バニリンの生成メカニズムを解明し、老麹を使うと良いとされる伝承を裏付けた。研究結果は、発酵分野で権威がある国際学術誌「ジャーナル・オブ・バイオサイエンス&バイオエンジニアリング」に掲載された。中心となった博士課程3年の眞榮田麻友美さん(27)は、同研究で博士号を取得した。

 香り成分は原料米の細胞壁に含まれるフェルラ酸が元となっていて、泡盛の醸造過程で4―ビニルグアヤコール(4―VG)に変わり、最終的にバニリンになる。研究ではフェルラ酸から4―VGへの変換に、黒麹菌の生産する酵素が寄与していることを明らかにした。遺伝子ノックアウト(破壊)技術で酵素を生産できなくした黒麹菌と、通常の黒麹菌を比較する実験で証明した。これまでの研究では、蒸留過程の熱によって4―VGが生成すると考えられていた。

製麹実験を行う琉球大学の眞榮田麻友美さん(左)と石川種麹店の渡嘉敷正司副代表(提供)

 製麹にかける時間を伸ばすことで、4―VGの量が増えることも分かった。42時間かけてつくられる通常の麹より、66時間かけてつくられる「三日麹」の方が古酒製造に適していることが裏付けられた。

 研究では、石川種麹店で扱う黒麹菌の株と、研究用の黒麹菌の株も比較した。「アワモリ」「サイトイ」と呼ばれている石川種麹店の2種類の株は、どちらも4―VGを増大させ、その能力はアワモリ株が高いことが分かった。一方、研究用の株は増大の効果が低かった。

 石川種麹店は、アワモリ株は香りがあり、サイトイ株は酸を作って発酵を安定させると経験則で理解し、酒造所のリクエストに応じて両方を混ぜて出荷しているという。

 石川種麹店の渡嘉敷正司副代表は「泡盛古酒の香りに黒麹菌が関わっていることが証明され、うれしい」と語った。