【八重瀬】沖縄戦を生き延び、戦後、遺骨収集に励んだ八重瀬町与座の安里ハルさん(99)は、元日本兵から送られた書道用紙に書かれた6首の短歌を約40年間大切に保存してきた。送り主は北海道出身で共に遺骨収集にも取り組んだ南義雄さん(享年96)。安里さんは「南さんの平和を願う思いを沖縄や本土の多くの人にも見てほしい」との思いでこのほど、全ての短歌を町立具志頭歴史民俗資料館に寄贈した。
南さんは沖縄戦時、日本軍の歩兵第89連隊(山3476部隊)第3中隊指揮班に所属し、本島中部で陣地構築に従事した。戦況が激しくなるにつれ南部へ撤退し、安里さんの家の近くに駐屯。激しい戦闘により相次いで戦友を亡くした。
「亡き戦友をこの手で供養したい」との思いで、南さんは北海道の有志と立ち上がる。1979年から85年に毎年自費で沖縄に来て与座周辺で遺骨収集に汗を流した。同じく遺骨収集をしていた安里さんは南さんらを自宅に招き、食事を提供したり寝泊まりさせたりした。その際、南さんはお礼も込めて、達筆な文字で思いをしたためた短歌を安里さんへ送った。
短歌は沖縄戦の悲しさや戦死した戦友への思いを詠んでいる。安里さんは沖縄戦の話になると険しい顔になるが、南さんについて語り出すと顔がほころぶ。「背が高かった。心が良く、男女、若い人、年寄りみんなに平等に接する人だった」と振り返り「北海道の人はいい人だよ」と目を細めた。2019年に亡くなった南さんは生前「戦争はしてはならない」「沖縄は第二のふるさと」と語っていたという。
南さんと安里さんの双方と交流があった東江京子さん(65)=同町世名城=が寄贈前に、短歌が書かれた書道用紙を二重に貼り直すなどして修繕した。東江さんは「南さんのような平和を願う日本兵もいたんだと知ってほしい」と話した。
短歌の寄贈を受けた具志頭歴史民俗資料館の担当者は「戦争や遺骨収集の思いがつづられていて、とても貴重な資料だ」と評した。同資料館は今後、沖縄戦の企画展などで展示する予定だ。
(照屋大哲)