元日本兵が詠んだ6首の短歌…40年間保存した女性「平和を願う心伝えたい」 八重瀬町に寄贈


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 【八重瀬】沖縄戦を生き延び、戦後、遺骨収集に励んだ八重瀬町与座の安里ハルさん(99)は、元日本兵から送られた書道用紙に書かれた6首の短歌を約40年間大切に保存してきた。送り主は北海道出身で共に遺骨収集にも取り組んだ南義雄さん(享年96)。安里さんは「南さんの平和を願う思いを沖縄や本土の多くの人にも見てほしい」との思いでこのほど、全ての短歌を町立具志頭歴史民俗資料館に寄贈した。

沖縄戦で戦死した戦友への思いなどを詠んだ南義雄さんの短歌を前に「世界が平和になってほしい」と語る安里ハルさん=2月14日、八重瀬町与座

 南さんは沖縄戦時、日本軍の歩兵第89連隊(山3476部隊)第3中隊指揮班に所属し、本島中部で陣地構築に従事した。戦況が激しくなるにつれ南部へ撤退し、安里さんの家の近くに駐屯。激しい戦闘により相次いで戦友を亡くした。

 「亡き戦友をこの手で供養したい」との思いで、南さんは北海道の有志と立ち上がる。1979年から85年に毎年自費で沖縄に来て与座周辺で遺骨収集に汗を流した。同じく遺骨収集をしていた安里さんは南さんらを自宅に招き、食事を提供したり寝泊まりさせたりした。その際、南さんはお礼も込めて、達筆な文字で思いをしたためた短歌を安里さんへ送った。

 短歌は沖縄戦の悲しさや戦死した戦友への思いを詠んでいる。安里さんは沖縄戦の話になると険しい顔になるが、南さんについて語り出すと顔がほころぶ。「背が高かった。心が良く、男女、若い人、年寄りみんなに平等に接する人だった」と振り返り「北海道の人はいい人だよ」と目を細めた。2019年に亡くなった南さんは生前「戦争はしてはならない」「沖縄は第二のふるさと」と語っていたという。

安里ハルさん(右)と南義雄さん(安里さん提供)

 南さんと安里さんの双方と交流があった東江京子さん(65)=同町世名城=が寄贈前に、短歌が書かれた書道用紙を二重に貼り直すなどして修繕した。東江さんは「南さんのような平和を願う日本兵もいたんだと知ってほしい」と話した。

 短歌の寄贈を受けた具志頭歴史民俗資料館の担当者は「戦争や遺骨収集の思いがつづられていて、とても貴重な資料だ」と評した。同資料館は今後、沖縄戦の企画展などで展示する予定だ。

(照屋大哲)