「買い支え機能残して」 JAおきなわの肥育事業撤退に農業基盤の弱体化を懸念する声


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JAおきなわが運営する今帰仁肥育センター=17日、今帰仁村

 JAおきなわ(普天間朝重理事長)が、沖縄本島にある肉用牛の肥育施設を売却する方針を固めたことに対し、県内の畜産農家に波紋が広がっている。JAが肥育事業から撤退することで子牛の供給先が縮小し、地域の農業基盤が弱体化するのではないかという懸念の声が相次いでいる。

 JAおきなわが民間企業への売却を予定している今帰仁肥育センター周辺の畜産農家は、存続に向けた署名活動を行う予定だ。

 JAおきなわの肥育事業は、県内の繁殖農家が生産した子牛を買い支える目的で始まった。だが、近年は子牛の競り価格が高値で推移しているため肥育事業は購入費用がかかっており、新型コロナウイルスの影響もあって年間1億円の赤字を出している。収支改善のために、JAは本島内での事業撤退に踏み切る。

 一方で、赤字を理由に肥育施設を民間に売却する判断について、県産和牛をブランド化して販売価格を高めるとした取り組みはどうなるのかなど、組合員への説明が不足しているという反発が起きている。

 県内の畜産農家は「競り価格は近年高値だが、変動がある。買い支えの役割は残すべきだ」とし、肥育事業の存続を訴える。

 売却予定の肥育施設は、今帰仁肥育センター、玉城農場、東風平肥育農場の3施設。売却先の企業がJAおきなわの肥育事業を継続する方向で、現在交渉の段階にある。東肥育センターは現在民間企業から施設を借りているため、企業側に返却する形だ。

 今帰仁村の畜産農家は「(農家は)JAの買い支えに依存しすぎては駄目だ」としながらも、「簡単に肥育センターを民間に譲るのではなく、地元の農家と選択肢を話し合うべきだ」と意見した。

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