「どういう指導だったのか、そういうところまで踏み込んでいけなかった。止めることもできたのかと思いながら、指導者任せの状況になっていた」
自ら命を絶った生徒が通っていたコザ高校の東盛敬校長は2月6日、遺族に謝罪し、後悔の念を述べた。同校は各運動部が優秀な成績を収め、部活動が盛んな高校として知られる。「各顧問が優秀な指導者なので…」。消え入るような声で言葉をつないだ。
生徒が所属していた部は副顧問もいたが、競技経験がないため指導はせず、大会時の送迎などでしか関わりがなかった。指導は顧問に一任されていた。
顧問は主将である生徒に対して「キャプテンやめろ」「部活をやめろ」などと強い言葉で叱責(しっせき)していた。「指導」は、部活中だけでなく帰宅後も続いていた。
顧問「今からは●●と相談して男子はやって下さい。女子は先生がちゃんと教えていきます。って言う事で頑張って下さい」(伏せ字は生徒の実名)「それでいいですねー。」
生徒「自分たちの考えが甘かったです、すみませんでした。新人大会に向けて絶対に勝ちたいので、■■先生の指導が必要です。お願いします」(伏せ字は顧問の実名)
顧問「ちょっと考えさせてください」
2020年7月31日午後9時44分から同10時52分にかけて、顧問と生徒が無料通話アプリLINE(ライン)でやりとりした内容だ。突き放すような対応の一端が垣間見える。
生徒のライン履歴を見ると、顧問から夜間に何度も着信があったことが分かる。「すぐに出ないと怒られるから」。生徒は自宅にいる時も常に耳にイヤホンをし、着信に備えていた。県教委は、生徒への連絡に私用の携帯やメールの使用を禁じていたが、徹底されていなかった。
遺族によると、生徒は2年生になると食が細くなった。食後に吐くこともあり、体重は数キロ減った。母親は「生徒たちを褒めて育てて」と顧問に何度も申し入れたが、顧問は「(生徒たちが)調子に乗るから」などと聞き入れてくれなかったという。
調査チームの報告書は、「管理者による部活動の巡回も行われていたようだが、不適切な指導を把握しにくい状況にあった」と管理体制の問題点を指摘した。報告書が公表された19日、校長は遺族宅を訪ね「管理職として失格と思いました」と述べたという。
(稲福政俊)
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