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保革超えた女性議員のネットワーク 議会から地域の変革を<「女性力」の現実 政治と行政の今>16


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テーブルを囲んで勉強会を開く沖縄うないネットのメンバー=北谷町内

written by 下地美夏子

 市町村議会の無所属の女性議員が中心となって構成する「沖縄うないネット」は、地域や保革の垣根を越えて勉強会や情報交換に取り組んでいる。取材した日の勉強会は、食卓のテーブルを囲んで始まった。テーマは、米軍基地周辺で検出されている有機フッ素化合物(PFAS)についてだ。共同代表を務める玉那覇淑子北谷町議は「女性の視点から見えてくる生活の課題は多い。女性が抱える問題を議会で提言することは、地域課題の解決につながる」と強調する。

 沖縄うないネットの前身は「沖縄子どもを守る女性ネットワーク」。2009年ごろから、女性議員に限らず男性議員や一般市民も集まり、子どもの貧困問題や児童虐待などの解決に向けて、東京での要請行動などに取り組んだ。同ネットワークの女性議員が「地域での活動にも重きを置こう」と、14年ごろに沖縄うないネットを立ち上げた。定例会前後に開く勉強会や他市町村の議員との情報交換を通して、女性や子どもに関する社会課題の解決を目指している。

 琉球新報が県内の全女性市町村議員62人(昨年12月現在)を対象に実施したアンケートで、女性議員を増やすために必要な取り組みや環境整備について最大三つ回答可能として聞いたところ、回答した58人から「女性が政治を学ぶ研修」が28回答あり、2番目に多かった。

 伊敷郁子糸満市議は「議会で少数の女性議員は、誰に相談すればいいかも分からない。無所属の議員は特にそうだ。議員同士でつながり、学びたい気持ちは強い」と語る。

 沖縄うないネットでは、各市町村の先進的な取り組みを共有し、各議会での政策提言に役立てている。當間左知子浦添市議は「他市町村と比べて見えてくる課題もあり、自分の視点に深みが増す」と利点を語った。また、高齢者福祉や子どもの貧困問題など、どの地域にも共通する課題は研究を重ね、それぞれが政策を提起することで「どこかの市町村で突破口をつくりたい」(伊敷市議)と意気込む。

 メンバーの多くは「基地・軍隊を許さない行動する女たちの会」や「カジノ問題を考える女たちの会」などに所属する。一方で、勉強会には保守系や政党に所属する女性議員にも参加を呼び掛けている。翁長久美子名護市議は「政策提言では市民の立場に立つことが必要だ。保守か革新かは関係ない」と話す。

 定期的に参加している本島南部の女性保守系議員は「男性先輩議員の輪の中には入れなかった」と打ち明け、「他市町村の女性議員に刺激をもらい、勉強しながら議員活動に生かしている」と意義を語った。

 設立当初から女性議員数は増え、女性のネットワークも広がりを見せるが、課題は残る。町村部は都市部よりも女性の政治参画が遅れる傾向にあり、離島ではいまだに女性議員が誕生していない議会もある。伊敷市議は「『地域の代表』と言うと、田舎の方では必ず男性だ。地域が変わるのを待っていたら100年はかかる」と指摘した。

 琉球新報が実施したアンケートでは、議席や候補者の一定数を女性に割り当てる「クオータ制の導入」を求める声(33回答)が最多だった。玉那覇共同代表は「議会へ積極的に女性を送り込むことで、地域全体で女性の参画の共通認識ができる」と期待する。議会から地域の変革を。女性たちの挑戦は続く。


 世界的にも遅れている日本の「ジェンダー平等」。玉城県政は女性が活躍できる社会の実現を掲げ、県庁内に「女性力・平和推進課」を設置しましたが、政治や行政分野で「女性の力」を発揮する環境が整わない現状があります。女性が直面する「壁」を検証します。報道へのご意見やご感想のメールは、seijibu@ryukyushimpo.co.jpまで。ファクスは098(865)5174。

 

 

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