勝ち続けなければ…生徒追い詰めた「部活強豪校」<「指導」の果て 部活生自殺>3


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県高校総合体育大会で、男女総合優勝を10連覇したことが強調されるコザ高の学校案内パンフレット

 亡くなった生徒が通うコザ高校は県高校総体の総合成績で10連覇中の「部活強豪校」だ。校舎には優秀な部活動の成績や卒業生の活躍を祝う垂れ幕が何本も掲げられる。高校総体連覇と学力向上を目標に掲げ、スローガンは「文武躍動」。中部で人気の高い高校だ。

 生徒は部活動の成績が評価される特別推薦枠で入学した。遺族によると、工業高校への進学も選択肢に入れていたが「教師になる」という夢に近づくため、普通科のある同校に決めた。入学時に3年間、部活を辞めないことを誓う「活動継続確約書」にサインした。

 生徒は高校に入っても好成績を収めた。ただ、一つ上の先輩と比べると物足りなさもあったという。「上級生が引退したら心配だ」。顧問の厳しい指導を知る関係者は、残された生徒に矛先が集中することを懸念していた。不安は的中し、生徒が主将になると顧問の厳しさは増した。「キャプテンやめろ」など、精神的に負担を与える言葉で生徒は追い込まれた。

 関係者によると昨年、ある大会の前日に、生徒がけがをした足を後輩にマッサージしてもらっていると、顧問から「こんなことはやる必要はない」と頭ごなしに言われたという。生徒は部活で使う道具などを全て自宅へ持ち帰り、家族らに「小さいことが積み重なってきつい。部活を辞めたい」とこぼした。周りが「辞めてもいいんだよ」と声を掛けるも、本人は部活を続ける意思を示した。

 勝てない時には責任を追及され、勝っても「まぐれ勝ち」と突き放された。第三者調査チームは報告書で「顧問は部活動の『やりがい』や『楽しさ』よりも、『勝つこと』を重視していたと思われる」と指摘。高校総体連覇中であることから「『勝ち続けなければならない』という重圧」も、生徒や顧問のストレス要因に挙げた。同校の内情について、関係者は「遠征費を使っても勝てない部活を、心ない言葉で非難する教員もいた。高校総体のポイントばかりを気にしていた」と語る。

 生徒にとって最後の大会となったのは、昨年の九州大会。生徒は重圧を抱えながら好成績を収め、表彰台に上った。表彰式で使われた賞状には名前が入っておらず、学校が持ち帰って名前を書き、生徒に渡すはずだった。しかし、顧問は嫌がらせのように、しばらく賞状を渡さなかった。名前の入った賞状を顧問が持参したのは、通夜だった。母親は「(生徒が)一番見たかったものだ」と思い、ひつぎに納めた。

(稲福政俊)


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