顧問の不適切言動、学校は処分せず…高2死亡の前にも被害者<「指導」の果て 部活生自殺>4


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高校生自殺事案の調査概要に対する記者の質問に答える金城弘昌県教育長(左から3人目)、コザ高校の東盛敬校長(右)ら=19日、那覇市の県教育庁

 「アイデアマンだが、職員間でも言葉が荒かった」「顧問が誰か知った時、やっぱりこの人かと思った」。部活動顧問の日常的な叱責(しっせき)に耐えかね、コザ高校の男子生徒が自ら命を絶ったことについて、顧問を知る教員らは心当たりを口にした。周囲が兆候に気付きながら、なぜ防げなかったのか。

 「学校側は、A教諭(顧問)の言動に対して注意を払うべきであった」

 第三者調査チームの報告書は、生徒が亡くなる以前にも、顧問が別の2人の生徒に対する不適切な言動があった可能性を挙げ、管理体制の不備を指摘した。2人のうち1人は不登校になった。県教育委員会が記者会見した19日、記者からは「別件」の2件に対する質問も相次いだ。

 学校側の説明によると、生徒が不登校の発端となる発言を受けたのは2017年度の3学期。顧問が受け持つ保健体育の授業で、休みがちだった生徒に対して「これ以上休むと(成績を)1にするよ」などと発言したという。18年度になっても発言が続き、生徒は不登校となった。生徒は19年度から登校を再開したが、保護者は顧問の謝罪を受け入れないほどの怒りを抱えていたという。

 不登校事案について、顧問は事実関係を否定し、学校は十分な調査を行っていなかった。19年度に赴任した東盛敬校長は、前任者から口頭で引き継ぎを受け、顧問に「言葉は大切だ」と注意したという。

 もう一人は部活の女子部員で、鼻に指を入れられたり、技を掛けて倒されたりしていたという。

 2件の「別件」について、学校側は県教委に報告せず、顧問は処分を受けていない。不登校事案について、いじめに起因するものは県教委に報告することになっているが、教員の言動に起因するものは報告対象ではなかった。県教委は、教員の言動による不登校も報告するよう改めるという。

 学校によると、部活動の顧問選任は教員間で調整する仕組みだった。県教委によると、体罰などで処分を受けた教諭は顧問になれないなど、顧問就任を制限するルールはなかった。

 調査チームの報告書は、不登校事案の対応不備や部活動指導に関するガイドラインの周知不足、管理職間の引き継ぎ不足などの問題点を挙げ、それぞれに改善策を示した。要約には「再発防止のためには当該部顧問一人の問題と捉えるのは不適切であり、学校及び設置者(県教委)のレベルでの対応を含めた検討が必要である」と記した。

 会見した金城弘昌教育長は「防ぐことができなかったことに対して慚愧(ざんき)の念に堪えない」と、苦悶(くもん)の表情で述べた。

(稲福政俊)


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