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新型コロナでデリバリー業界が隆盛 加盟店急増、新規参入も<変革沖縄経済>24


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
2020年8月、県内に進出した飲食デリバリー事業者「ウーバーイーツ」の配達員=那覇市内

written by 池田哲平

 新型コロナウイルスの影響で休業する飲食店が相次ぐ中、県内で急速な広がりを見せているのが飲食デリバリー(宅配)事業者だ。出前サービス国内最大手の「出前館」(大阪府)が、2020年6月に県内で事業を開始。米配車大手ウーバー・テクノロジーズが手掛ける「ウーバーイーツ」も、沖縄本島で配達事業を始めた。新型コロナウイルス感染症による「中食」需要の高まりが拍車を掛け、いずれも加盟店舗数が拡大している。

 県内で「出前館」の配達を担う、「カツデリ」の照屋秀人代表は「(新型コロナウイルス)感染症の影響で需要拡大のペースは速い」と、県内におけるデリバリー需要の急速な増加を語る。開始当初、加盟する飲食店は10店舗程度だったが、現在は数十倍にも膨れあがっているという。

 現在まで配達員は直接雇用のアルバイトやパートの職員が担ってきたが、加盟店舗数の拡大に伴い、件数などによって賃金を支払う形で、業務委託ドライバーによる配達も4月1日から開始する。

 同業他社との掛け持ちも可能とするなど、「ギグワーク」(空いた時間を使って複数の仕事をする働き方)の需要にも柔軟に対応していく考えだ。照屋代表は「配達エリアの拡大も進め、県内でシェアを広げていきたい。飲食店に便利さを知ってもらい、デリバリー文化を広げたい」と業界の発展に期待する。

 昨年8月に新都心地区など那覇市北部と浦添市で事業を開始したウーバーイーツは、今月から沖縄市とうるま市の一部地域でもサービスを開始するなど、シェアを広げている。

 ウーバージャパンによると、昨年8月時点の県内の加盟店数は「70店舗以上」だったが、3月15日時点は「400店舗以上」となり、事業開始から半年あまりで5倍以上に増加した。同社は「エリアの拡大に積極的に取り組んでいく」として、引き続き県内でのさらなる配達エリア拡大に取り組む姿勢だ。

 業態を変更し、フードデリバリーサービスに参入したのが、イベント企画運営の「ツーボックス」(坪香宏貴代表)が始めた「ツボデリ」だった。加盟店舗数は100店程度と、大手2社に比べると限定的だが、地元の人に愛されている店舗を厳選し、デリバリー用のメニュー開発を店舗と進めるなど、独自の体制で事業を広げ、知名度も徐々に向上している。

 坪香代表は「小さな飲食店にも、それぞれにファンがいる。厳選した店を紹介することで、食のレベルの向上にもつなげていきたい」と語る。

 感染症の終息後はデリバリーとリアルイベントの融合、飲食店を表彰する「ツボデリアワード」の創設などを構想しており、イベント運営会社としてのノウハウを踏まえた「仕掛け」を通して事業拡大を目指す。

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