沖縄戦「住民よく協力」 中学歴史、自由社の教科書が合格 琉球処分の「奴隷」説明は修正


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 昨年度の検定で不合格となった自由社の中学歴史教科書について、文部科学省は本年度も検定し、合格とした。同社の教科書は「終戦をめぐる外交と日本の敗戦」の項目で沖縄戦を取り上げ、「この戦い(沖縄戦)で沖縄県民にも多数の犠牲者が出ました。日本軍はよく戦い、沖縄住民もよく協力しましたが、沖縄戦は6月23日に、日本軍の敗北で終結しました」と記した。

 注釈で「日本軍にも住民にもそれぞれ9万人あまりの死者を出す激戦」と記したが、文科省から死者数の内訳について「生徒が誤解する恐れのある表現」と指摘され、「県民も含めた日本側の死者は18~19万人にのぼり、その半数は一般市民でした」と修正した。

 琉球処分については1ページの特集を設け、伊波普猷の言葉を基に「一種の『奴隷解放』だった」と説明した。当初「身分差別を撤廃した近代的な法制度が導入された」と記述したが、文科省が伊波のいう「奴隷」状態を生徒が誤解するおそれがあるとして修正を求め、「薩摩藩支配下の『一種の奴隷状態』から解放され、また琉球王国下の身分差別からも解放されて、沖縄の住民は日本国民となった」という表現に変更された。

 琉球処分に関する取り上げ方について、沖縄近現代史家の伊佐眞一さんは「日本が武力を使って琉球を併合したのが実態だ。沖縄出身の沖縄学研究者の言葉を都合のいいように使い、明治政府にとって都合の悪いことを覆い隠している」と批評した。

 また「『琉球処分』という言葉が定着しているが、処分は上下関係で行われるもので、国と国の関係では適さない。琉球という国家を武力で侵略しているのだから、『琉球併合』という言葉の方が実態を表している」と問題提起した。