サンエー社長「厳しい状況でも成長させていく」21年2月期決算会見全文【WEB限定】


この記事を書いた人 Avatar photo 玉城江梨子

 沖縄県内スーパー最大手のサンエーは6日、3期連続の増収減益となる2021年2月期(2020年3月~21年2月)連結決算を発表した。創業以来51期連続の増収を確保したものの、新型コロナウイルスの影響で消費動向が変化し、純利益が20%減少した。決算会見での上地哲誠社長のコメントと記者との一問一答は以下の通り。

 

■コロナに翻弄された1年

 

 この1年間は新型コロナの感染拡大に翻弄された。緊急事態宣言のたびに大きな影響を受けた。衣料品、外食が大幅に落ち込んだ一方、食品、家電がプラスになっている状況。これほど落差の激しい状況は今までない。月別で見ても(2020年)3月、4月、7月、9月、(2021年)2月は前年割れ。それ以外の月が前年超え。月別でも落差が大きいという状況だった。部門別の売上構造も例年とは違う。落差が大きい決算だった。

 そのような厳しい環境の中で、緊急事態宣言で休業や時短営業といった今までない状況に対応してきた。厳しい中でも感染予防を徹底しながら、みんなでお客様のニーズに応えるように仕組みを変えてきた。

 特にネットスーパーが急速にお客さんの支持率が上がっている。積極展開して経塚シティ、西原シティ、那覇メインプレイスに加えて宜野湾コンベンションシティ、具志川メインシティ、豊見城ウイングシティと6店舗体制になった。スピードあげていく。オンラインショップも自社サイトを立ち上げた。こちらも支持率が高い。これも含めて強化していきたい。

 外食、衣料品が厳しい中、社員は1年間食品の応援したり、職を超えてみんなで助け合う、協力の社風で乗り越えてきた。社員には心から感謝している。その結果、全体としてのバランスがとれた。集合研修とか入社式とか、一堂に集まるということができないということがあったので、全店にオンライン会議できるようにしてコミュニケーションをとってきた。それから日曜日の過密防止のためにできるだけ(混雑を)平準化するため、日曜市の(商品の)種類を変えたり、土曜日にお買い得品を移動したりして平準化した。この辺のお客さんの支持があったのではないか。

 インバウンドは本当に1%、ゼロに近い状況で全くなくなっているので、地元のお客さまを優先してきた。厳しい1年だがこの中で得たいろんな知恵、工夫を大事にして進めていきたいと思います。

決算について説明する上地哲誠社長=6日、サンエー浦添西海岸パルコシティ

■お客様は冷静に行動している

 

Q:コロナの中でお客さんの消費行動が変わったのは何か。その変化のうちコロナ後も続くと思うのは何か。

 

A:お客様の求めるものは変わってきた。食料品はこれまでずっとできたての商品が非常に支持されていたが、ここに来て素材系の商品が出ている。生鮮3品ですね。お肉、お魚、野菜といった家庭で調理するもののニーズが増えている。大きな変化はそれ。

 

衣料品は、この1年間はよそ行きの商品がほとんど止まっている。結婚式も少なくなっている。入学式も自粛して小さくなっていることもあり、ハレの日、よそ行きの商品が減っている。一方で家庭で着るものの需要は増えている。そういうメリハリがある。逆にこの3月の状況を見ると、ランドセル、式服とか昨年少なかった分といいますか、今度は伸びているという状況がある。上がったり下がったりしている。

 

家電もリモートワークが増えてパソコンの伸びがある。家の中で過ごす時間が長いので大型テレビや洗濯機も伸びた。外に出していたのを自分の家の中でやるという需要の変化は見て取れる。そういったところは今の変化。

 

この3月以降は去年伸びた商品は少し落ち、下がった商品は少し上がる。元に戻らなくても緩やかな上昇になっている。お客様は非常に冷静と言いますか、アップダウンというより冷静に行動しているのではないか。そういったお客様のニーズをくみ取りながらこの後も今期はしっかりやっていく。予算の組み立ても去年ほどのアップダウンではなく、冷静にお客様も緩やかに対応しているので、それに合わせて予算組みもしている。仕入れも出張できないので、リモートでの商談をしっかり進めてタイムリーな仕入れをしていく。

ニーズが増大しているネットスーパー=2020年4月、サンエー宜野湾コンベンションシティ

■粗利率の減少は致し方ない

 

Q:部門別で見ると、食品が伸びている。食料品をここまで伸ばすことができた要因は。

 

A:ネットスーパーは2013年スタート。いずれネット販売が増えることは予想していたので、ネットとリアルの融合は急がないといけないと準備して2013年からやってきた。オンラインショップはその前からあったのが、急速にこの1年ニーズが高まってきた。今は少し無理してでもいいからここを拡大している状況です。幸いにもネットスーパーの要は配送。これを自社グループのサンエー運輸で担っている。オールサンエーで進めているので非常に順調に来ている。このあとエリア拡大などもあります。ネットスーパー、オンラインショップはお客様のニーズは高まる一方なので、これに関してはスピードをあげて、人材確保も強化してやっていく。

 

Q:コロナの状況は今後どう見通しているか。業界全体のこの先をどう見通しているか。

 

A:見通しはなかなか難しい。ワクチン接種が行き渡らないとなかなか収束は見通せない。それまでいかに感染を予防するかということで、社員にも行動の自粛をお願いしたり、また店舗はお客様の感染予防も非常に大事ですので、しっかり消毒したり、環境整備をしっかりやるのが大事。衛生管理をいかにするか、ワクチンの接種までみんなが感染しないような体制を整えていく。そういうできることをやるに尽きる。なかなか見通せないだけに、窮屈な思いもするが、我慢しながらやっていくしかない。その中でもお客様も冷静にお買いになられているし、社員も一致協力体制でやっている。この環境の中でみんなが一生懸命やっていることは感謝したい。

 

Q:中間決算では粗利率が落ちていたが、通期での粗利率はどのくらいになったか?

 

A:1年間通して衣料品、外食が落ち込み、構成比として食品が上がったために、粗利が減少したのは数字に表れている。これは致し方ない。中間決算とほぼ同じ流れの中で今落ち着いた状況。今期については構成比が元に戻りつつあるので、前期よりは少し粗利率が改善を見込んでいる。

 

Q:大型商業施設の今後は?

 

A:今できている店をしっかり管理し、支持率をあげていく。パルコシティもオープンして2年目。(開業から)1年たたないうちにコロナに遭遇したので、あるべき姿に到達するのに時間がかかっているが、ここにきて地元のお客さん増えてきている。特に毎週土日。ゆったり買い物する環境を大事にしながらやっていきたい。当面、大型施設は今の流れを大事にしていくしかない。今期は出店もあまりないので、既存店を大事にする。

2020年4月の緊急事態宣言中は大型店のテナントが休業を余儀なくされた=2020年4月、サンエー浦添西海岸パルコシティ

■厳しい状況でも成長させる

 

Q:今期(22年2月期)の見通しは感染状況をどの程度見込んだ数字か。

 

A:今年に入ってから1月、2月、3月をベースにしている。今、感染者が増えている状況があるが、昨年の4月、5月のような状況にはならないだろう。最低限の状況は見ている。これがもし昨年の4、5月のように緊急事態宣言があって、テナントの休業があると数字は違うものになるが、そこまで追い込まれないと見ている。またワクチンも出てきているので、冷静な対応で今の状況を押さえながらうまく対応していくと想定している。今、外食は時短しているが、全体が休業、時短はならないと見ている。

 

Q:22年2月期は増益を見込んでいるが、押し上げ要因として大きいものは何か。

 

A:今期は衣料品、外食が前期ほど落ち込まないと見ている。といって前前期まで戻るのはない。特に衣料フロアは夜10時で閉店している。外食の時短を含めてまだ前前期に戻ることはないだろう。食品も去年の伸びは「巣ごもり需要」と言われるくらい伸びたが、それも今期はそこまではいかないだろうと見ている。いろんな状況を勘案し、総合しながらあまり無理な予算でもないけど、かといって落ち込んだ予算でもない。このくらいの伸び率はキープしないといけない。会社としてはどんなに厳しい状況でも成長させていくという意思を込めた予算です。

 

Q:今期の配当は、実質的に増配という理解でいいのか。

 

A:前期が50周年だったので記念配を出した。非常に悩んだ。減益でコロナも厳しい状況だが50周年迎えたのは地域の方々、お客様、株主のみなさんのご支援のおかげでもある。記念配をしっかりして、増配という形で50年の感謝の意を込めた。

【関連ニュース】

▼サンエー51年連続増収、3期連続減益 コロナで衣料・外食不振 2月期連結決算

▼コロナで利用者急増のネットスーパー 課題は発送網の構築

▼サンエー2020年2月期決算は増収減益「コロナ、消費増税が影響」

▼子連れトイレの「恐怖体験」解決しました サンエーが目指す当事者目線