【詳報】米軍の降下訓練急増、市町合併についての考えは?<うるま市長選立候補予定者座談会・下>


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うるま市長選に向けて健闘を誓い、拳に力を込める(右から)中村正人氏と照屋寛之氏=9日午後、沖縄市の琉球新報中部支社

 うるま市長選の立候補予定者を招いた座談会で9日、ともに新人の中村正人氏(56)と照屋寛之氏(68)が、新型コロナ対策や経済・雇用政策、米軍パラシュート降下訓練への対応、子育て支援などについて政策を訴えた。合併後の市政に対する評価などで、双方の主張に違いが見られた。クロス討論は双方から2問ずつ質問があった。(敬称略)

【詳報】コロナ対策どう取り組む?子育て、若者支援は?<うるま市長選立候補予定者座談会・上>


《米軍降下訓練》

住民被害強く対処 中村氏
同盟より市民の命 照屋

中村正人氏

Q.津堅島沖で米軍のパラシュート降下訓練が急増している。

 中村 漁業者をはじめ船舶に対して危険な訓練であり、反対だ。議会も市も常に抗議している。日米安保は容認の立場だが、事件・事故などの住民被害には強く対処していきたい。

 市民、県民、国民の安全・安心のためにも、その不安定要因である基地から派生する事件・事故の削減を追求していく。根本問題として、日米地位協定の抜本的な改定を議会とともに日米両政府へ求めていく。

 照屋 うるま市長にとっては日米同盟よりも市民の生命、健康、財産を守ることが大切だ。議員や県、他の市町村とも連携し、訓練中止と日米地位協定の改定を求める。

 県の調査によると、ドイツ、イタリア、ベルギーとは違い、日本だけが米軍に国内法を適用していない。基地の管理権もなく訓練・演習に物が言えない。根本的には地位協定の改定しか解決できない。


《合併後の課題》

観光産業推進図る 中村氏
にぎわい取り戻す 照屋氏

照屋寛之氏

Q.2市2町合併後の評価と課題は。

 中村 学校や保育施設の整備、待機児童の減少や道路整備など、さまざまな施策により着々と住みやすい町になっている。これまでの知念市長や島袋市長の手腕で確実に進歩しており、高く評価している。地域課題については、海中道路までの高規格道路の延伸による利便性の向上、ワーケーションや地域資源を生かした自然と文化の融合する観光産業の推進を図りたい。

 照屋 世界遺産や海中道路、農水産物など合併したうるま市が持っているスケールメリットは無限の価値がある。しかし、そのポテンシャルが発揮できているわけではない。市民所得は40位で失業率は11市で1番高い。安慶名地域に商業や文化、娯楽地域としてのにぎわいを取り戻す。与勝地域を海洋レジャーの聖地にしたい。具体的な活性化を図り、特性を生かしたい。


《訴えたいこと》

透明性ある市政を 照屋氏
市民のため尽くす 中村氏

Q.有権者に最も訴えたいことは。

 照屋 希望の持てるうるま市にするために全身全霊で挑む覚悟だ。公約に掲げる「飛び出せ市長室」の実施で市民の声をじかに聞くことによって、公正で透明性のある市政運営を実現する。市民が主人公で市民主権のうるま市をつくりたい。もっと活性化するためには、これまでの行政を尊重しつつも、市民からの「変えてほしい」との声を受け止め、刷新する必要がある。

 中村 コロナ禍で見たことのない光景が世界でも広がっている。行政も全てが手探りで対応に苦慮している。市民ももがいている。これまでの議員生活で得てきた経験と知識を生かして市民のために尽くしたい。行政、議会、市民の力を結集し、コロナ禍の混乱を乗り越える。その中で、社会の立て直しに尽くす。22年間の政治経験はそのためにあると信じている。


《クロス討論》

中村氏「オール沖縄 軍港問題で違い」
 辺野古阻止へ結束 照屋氏

照屋氏「個人の所得『真ん中』根拠は」
 個人の給与表さず 中村氏

 中村 オール沖縄を構成する政党や団体は主義主張が異なるため、問題に対処する際、解決ではなく先送りとならないか。

 照屋 政党や団体は主義主張が異なっているのが当たり前だ。主義主張を競い合わせ、お互いが政策を磨けば、市民により良い政策を提示できる。

 中村 辺野古移設反対で一致していても、浦添市長選では那覇軍港移設問題で、玉城知事と共産党の違いが大きく浮き彫りになった。

 照屋 辺野古問題ではオール沖縄で戦っていかなければならない。那覇軍港問題では、今までの継続性を考えると、玉城県政がひっくり返すのは難しいと思うが、まだ途上だ。

 照屋 後援会幹部に市商工会長や市観光物産協会理事長らが就いているのは問題ではないか。

 中村 市商工会長は旧知の仲だ。市議時代から政治活動への助言を受け、サポートしてもらっていた。個人的な関係から後援会長をお願いした。

 照屋 商工会の本来あるべき姿を考えれば、会長が旧知の仲かどうかは別次元の話だ。

 中村 市長になった時には公平公正でいかなければならないと思う。

 照屋 うるま市の1人当たりの市民所得は県内40位だ。「個人の所得は県内で真ん中くらいとの認識だ」と述べているが、根拠は。

 中村 1人当たりの市民所得は、市町村民所得の合計を人口で割った数字であり、個人の給与や実収入などの所得水準を表すものではない。

 中村 市長専用車はいらないとの公約は現実離れしていないか。行財政改革ではない。

 照屋 調査研究した中では、ある町の首長は専用車を廃止していた。

 中村 市長は激務。しっかりと公務をこなすために専用車はある。

 照屋 専用高級車は必要ないという意味で、一般職員が乗るような車を使うという話だ。

(右から)中村正人氏と照屋寛之氏=9日午後、沖縄市の琉球新報中部支社

 

― 出席者 ―

 中村正人氏(56)=無所属新人、自民、公明、会派おきなわ、無所属の会推薦

 照屋寛之氏(68)=無所属新人、共産、立民、社民、社大、新しい風・にぬふぁぶし推薦

 司会 宮城隆尋(琉球新報社中部支社報道部長)