段ボールに大けがした猫「助けてください」 命つないだ善意のリレー 石垣島


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 【石垣】石垣島で交通事故に遭い大けがを負った猫が、人々の善意のリレーにより命をつなぎ止めた。1カ月余りの治療の末、4月に退院した猫は、現在、自力で餌を食べられるほどに回復している。

病院に運び込んだ男性(右)と看護を続けた女性に見守られ退院を迎えた猫=2日、キーストーン動物医療センター石垣(船倉栄院長提供)

 2月下旬のことだった。西表島での診療を終え、船に乗っていたキーストーン動物医療センター石垣(石垣市宮良)院長の船倉栄さん(49)の携帯電話に連絡が入った。「大けがをした猫がいる。助けてください」

 病院に猫を運び込んだのは、この病院で自身の飼い犬を診察してもらっている男性。勤務先の会社前に「警察、市役所に電話したが取り合ってもらえなかった。助けてください」と書かれた段ボールが置いてあったという。そして中には大けがした猫がいた。

 猫の状態は深刻だった。下あごは砕かれ、右目は飛び出ていた。肺挫傷や脳挫傷もあった。石垣島に戻った船倉さんは、すぐに手術に取り掛かった。

 3時間半にも及んだ手術は無事成功した。だが治療はまだ続く。点滴で栄養を送りつつ、ステロイドや抗生物質も打った。次第に体力は回復していったが、あごをけがしていたため、鼻から流動食を流した。

 船倉さんによると、猫は口のけがに敏感で、痛みがあると餌を食べないという。そんな猫の口元に、動物病院で看護師を務めていた女性が軟らかい餌を運び続けた。1カ月余りの懸命の看護のかいもあり、今では猫は自力で歩けるようになり、餌も食べられる。

 現在、女性は病院を退職しているが、この猫を引き取り、一緒に暮らしているという。

 船倉さんは今回の出来事について「多くの人の善意で助けられ、命のバトンをつなぐことができた。島の人々には動物の命の重さを感じてほしい」と話している。

(西銘研志郎)

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