米軍普天間飛行場から発がん性などのリスクが指摘される有機フッ素化合物PFOSやPFOAを含む泡消火剤が大量に流出した事故から、10日で1年を迎えた。事故を巡っては日米地位協定の環境補足協定に基づく日本側の基地内への立ち入り調査が初めて実施された。だが立ち入りで採取が認められた水や土は米軍が認めた一部区域に限られた。県や宜野湾市は過去の事故や訓練で蓄積した汚染の実態を調べるために改めて立ち入り調査を申請しているが実現しておらず、解決に至っていない。
事故直後に琉球新報が基地周辺で採取した水を京都大が調査した結果、宇地泊川でPFOSとPFOAの合計値で1リットル当たり247・2ナノグラムを検出した。これは環境省が設けた暫定目標値の約5倍の濃度となる。事故後半年の再調査では宇地泊川の値は5・4ナノグラムと大きく減少した。沖縄防衛局が宜野湾市や浦添市の基地外14地点で事故後に実施した水質調査でも、全地点で指針値以下だった。河川水は水流によってPFOS・PFOAの濃度が下がったとみられている。
一方、基地周辺の地下水ではなお高い値が検出されている。有機フッ素化合物は環境中でほとんど分解されないため、基地内に残った汚染が漏出し続けているとみられている。
県が昨年9月に実施した米軍基地周辺の地下水調査では、嘉手納基地周辺で環境省が定める暫定指針値の約60倍のPFOS・PFOAを検出した。普天間周辺でも40倍の値を検出し、ともに過去最高値だった。
昨年4月、普天間での流出事故後に実施された立ち入り調査の根拠となった環境補足協定の欠陥も指摘される。同協定は汚染事故が「現に発生した場合」に立ち入りを認めている。昨年の調査では、事故が起きた格納庫周辺で米軍が同意した地点だけで水や土の採取が認められた。だが調査結果を見ると、米側が事故で汚染した可能性が高いとして、はぎ取った部分よりも下の層や、別の地点の土でより高い値が検出された。
県などは過去の事故や訓練で基地内に汚染が残っている可能性があるとみて、普天間飛行場や嘉手納飛行場の立ち入り調査を改めて求めている。 (島袋良太)
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