「ただ事でない異常さ」…米軍の泡消火剤流出事故から1年 住民の不安消えず


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 【宜野湾】温暖な沖縄で雪のような物がふわふわと舞っていた。昨年4月10日の夕方、米軍普天間飛行場に隣接する宜野湾市真栄原の保育施設で、帰ろうとする園児たちの頭上に、飛行場の方から数センチ~数十センチの泡が飛んでくる異様な光景が広がった。発がん性などが指摘される有機フッ素化合物(PFAS)を含む泡だった。

米軍普天間飛行場内から流出する泡消火剤を食い止める基地の消防職員ら=2020年4月10日午後6時すぎ、宜野湾市内

 普天間飛行場から泡消火剤が流出した事故から10日で1年となった。事故は基地周辺に住む地域住民に大きな不安を与えた。当時、現場に駆け付けたさつき認定こども園(市真栄原)園長の沖山隆雄さん(72)=市大謝名=は「ただ事ではない異常さを感じた」と振り返る。保育施設の関係者によると、事故直後には、同飛行場内から米兵が施設に向かって笑顔で手を振る姿もみられた。沖山さんは「泡は大丈夫と考えたのかもしれないが、問題意識が低いのではないか」と疑問視する。

 水に溶けた約14万リットルの泡消火剤は、保育施設横の排水路を流れ宇地泊川(比屋良川)へ。川に滞留した泡が市街地に飛散したが、米軍は回収しなかった。沖山さんは「有害物質を放置し関係ないという意識は言語道断」と憤る。

 那覇市出身で宜野湾市に住み約40年になる沖山さん。戦闘機が飛ぶと園児は「怖い」と耳をふさぎしゃがみ込む。2004年には近くの沖縄国際大学にヘリが墜落し、無残な現場も目撃した。日々の騒音被害と事故の危険性に悩まされる中、新たに生じた環境問題だった。

 PFASは自然環境の中でほとんど分解されず、「人体への影響がどうなるのか気になる」と懸念は消えない。日米安全保障条約は大事だとの考えだが、米軍には「沖縄の環境を汚さない意識改革をやってほしい。細かい配慮をしないと地元住民は納得できない」と注文する。

 12日には日米両政府による同飛行場の全面返還合意から25年を迎える。「合意をうやむやにせず、実現してほしい」と求める一方、同飛行場の名護市辺野古移設計画は「向こうの人たちが私たちと同じ思いをするのは申し訳ない」と複雑な感情が交差する。

(金良孝矢)

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