米軍や自衛隊が漏出させた泡消火剤に含まれていた物質、PFAS(ピーファス)は、有機フッ素化合物の総称。物質としての安定性が高いため、環境中でほとんど分解せず、人や動物の体内にも蓄積する。特にその一種のPFOS(ピーフォス)は、発がん性など健康リスクが指摘されている有害物質だ。日本国内では原則、使用・製造禁止。国際的にも規制され、日本でも米国でもPFOSを含まない消火剤に順次交換していくことになっている。
PFOSの正式名称はペルフルオロオクタンスルホン酸(PerFluoroOctaneSulfonic acid)。1940年代に米国で開発された有機フッ素化合物の一種だ。耐熱性、耐薬品性などで優れた安定性を持つことから、撥水(はっすい)剤や泡消火剤などに使われてきた。
PFOA(ペルフルオロオクタン酸=PerFluoroOctanoic Acid)も同様の性質を示し、以前はフライパンのテフロン加工や食品包装紙の撥水加工の原料などに利用されてきた。現在国内での使用制限はないが、主要メーカーは自主的に使用廃止している。
両物質とも、環境中で分解されにくく蓄積しやすい性質から「永遠の化学物質」とも呼ばれる。発がん性や胎児の低体重、成人の生殖機能への悪影響、肥満、甲状腺疾患などの健康リスクがあるとされる。動物では、胎児に影響を及ぼすことが報告されている。
PFOSは、残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約で国際的に製造・使用が制限され、国内でも一部例外を除き原則的に使用・製造が禁止されている。PFOAについても、世界保健機関(WHO)の外部組織である国際がん研究機関が発がん性のおそれがある物質として分類している。
環境省は2020年、河川や地下水などの水環境における指針値(暫定)として、PFOSとPFOA合わせて1リットル当たり50ナノグラムと決めた。21年2月に航空自衛隊那覇基地から泡消火剤が流出した事故では、指針の128倍にあたる最大6390ナノグラムが検出された。
米軍基地内の泡消火剤で使用されており、16年1月には県企業局が北谷浄水場の水源で高濃度のPFOSが検出されていると公表した。普天間飛行場では、2020年4月にも周辺住宅地などに大量の泡消火剤が漏出する事故が起きている。