玉城知事、糸満土砂採掘の中止命令に踏み込まず 具志堅氏「納得できない」


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玉城デニー知事

 沖縄県の玉城デニー知事は16日午後、県庁で会見し、糸満市米須で土砂を採掘しようと自然公園法に基づいて県に開発を届け出ている業者に対し、行政手続法に基づき、措置命令の発出に向けた弁明の機会を与える「弁明通知書」を手交したと発表した。業者からの弁明の内容を確認した上で、5月14日までに最終的な対応を判断する。名護市辺野古の新基地建設を巡り、沖縄戦の遺骨が残る本島南部から新基地建設の埋め立てに使用する土砂が搬出される可能性があり、市民からは業者に中止命令を出すよう県に求める声が上がっていたが、玉城知事は中止命令などには今回、踏み切らなかった

 本島南部の土砂採取を巡っては、沖縄戦の遺骨収集ボランティア「ガマフヤー」の具志堅隆松代表らが、沖縄戦戦没者の遺骨が混じった土砂を基地建設に使わせないことを県に求め、ハンガーストライキや署名活動を行ってきた。具志堅氏は、本島南部の土砂を採取し辺野古新基地建設の埋め立てに使う計画の断念と、知事による採掘事業の中止命令を求め、陳情を県議会に提出。県議会は現地視察や参考人招致を行った後、15日の臨時会で、沖縄戦戦没者の遺骨などが混入した土砂を埋め立てに使用しないことを政府に求める意見書を全会一致で可決した。

 具志堅氏は玉城知事の発表を聞き、「置き去りにされた気分だ。役所の中だけで決めてしまった」と知事の判断に落胆。「残念を通り越して憤りを感じている。納得できるものではない」と訴えた。

糸満市の遺骨混入土砂で採掘業者への対応について説明する玉城デニー知事(右)とそれを聞くガマフヤ-の具志堅隆松さん(左端)=16日午後、県庁

 会見で、玉城知事は、採掘が予定されている場所は、国内唯一の戦跡国定公園内での行為であり、戦没者の遺骨である蓋然性が高い骨片が確認されていること、周囲に慰霊碑も数多くあることなどから、自然公園法第33条2項の「風景を保護するために必要があると認められたとき」との規定に該当すると説明。業者に対して、「人道的な観点から、悲惨な沖縄戦の遺骨等が混入した土砂は採取しないこと」「戦没者の遺骨収集の推進に関する法律、糸満市風景づくり条例等関係法令を順守するとともに必要な手続き等を確実に実施すること」などを留意するよう通知した。

 措置命令は、業者の届け出から原則30日以内に示す制度になっており、16日が期限となっていた。玉城知事は16日付で業者に対して弁明通知書を手交したため、業者は30日までに弁明書を提出しなければならない。その内容を踏まえ、県は5月14日までに最終判断を行うとしている。県によると、弁明期間後、措置命令に応じなかった場合は中止命令を出せる。

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