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「女性に激務かわいそう」 成長阻む男性の「優しさ」<「女性力」の現実 政治と行政の今>19


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 「女性ってだけで出世できる時代だよな」。県職員らでつくる県関係職員連合労働組合(県職連合)の執行委員長を務める伊良波純子氏(60)は30年ほど前、当時上司だった50代男性職員が放った言葉に耳を疑った。雑談中のふとした発言だが、その場には女性の係長らもいた。

 伊良波執行委員長は「女性の管理職が少しずつ増え始めた時期だった」と振り返った。実際は、男性が出世しやすい従来の環境が是正されつつあるだけだが、「ひがんでいたのだろう」と苦笑する。

 県庁内でも、当時と比べて管理職に就く女性の割合は増えてきた。それでも、2021年度の管理職数329人のうち女性は54人の16・4%にとどまる。ジェンダーに関する偏見もいまだに残っている。伊良波執行委員長は「まだ過渡期だ」と指摘した。

 20年度に県庁や市役所で働く公務員33人に匿名で答えてもらった琉球新報の調査では、「いまだに男性は仕事、女性は家事育児という概念が根付いている」「はっきりと意見を言う女性はあまり評価されない」などの意見が寄せられた。

 男女の役割イメージの固定化は、部署ごとの男女比にも顕著に表れている。知事公室や総務部、企画部で女性は3割なのに対し、子ども生活福祉部や保健医療部では女性が過半数だった。実際は部署ごとに極端な残業の差はないが、複数の回答で総務や企画は激務の印象が強いとされた。

 総務や企画に関連する部署に女性が配置された場合でも、庶務的な業務を割り当てられる傾向が強いとの証言もある。40代女性の県職員は「『大変な業務を女性にさせるのはかわいそう』と優しさから配慮をする男性もいるが、それが女性の成長を阻んでいる」と語った。

 共働きの家庭で、女性の方が業務を切り上げて家事や子育ての負担を多く担う場合が多いことも背景にある。19年度の育児休業取得率は女性は100%だが、男性は16・9%。増加傾向とはいえ、まだ差が大きい。

 経験していない業務の管理職を務めるハードルは高く、管理職の年齢を迎えるころに女性が就くことのできるポストが事実上、限定されてしまう。その結果、男性が出世しやすい状況が生まれる。市町村も同様の傾向がある。

 伊良波執行委員長は「最初から男女で役割を分けられ、女性には訓練の機会が与えられてこなかった。だから、管理職に就きたがらない女性がいる」と分析する。ある先輩職員の女性は「本当は(管理職を)やりたくない。だけど断ったら(女性の出世の)後が続かなくなる」と漏らしていたと言う。

 一方で、「出世したくない男性もいるはずだが『男のくせに断るのか』と言われる。別のつらさがある」と語る。結婚していない女性や子がいない女性も「無理させていい」と扱われる風潮があると感じている。「それぞれ自分が望む働き方を選べるようになるのが一番いい」と強調した。 (明真南斗)

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 世界的にも遅れている日本の「ジェンダー平等」。玉城県政は女性が活躍できる社会の実現を掲げ、県庁内に「女性力・平和推進課」を設置しましたが、政治や行政分野で「女性の力」を発揮する環境が整わない現状があります。女性が直面する「壁」を検証します。報道へのご意見やご感想のメールはseijibu@ryukyushimpo.co.jpへ。ファクスは098(865)5174